みどりの絵本の会

 絵本を読み比べたりすることで、絵本をもっと楽しもうという会です。
今年はシリーズものの絵本をいろいろ読んでいます。
2002年
2003年
2001年
2000年


184 8月号

みて見て、読んでみて みどりの絵本の会
玉井万里

 7月はアニタ・ローベルの絵本を読みました。アニタ・ローベルは、1934年ポー
ランドのクラフトに生まれて、ユダヤ人の家庭に育つ。第2次大戦中は、弟ととも
に乳母の手に預けられる。強制収容所で生きのび、1945年スウェーデン赤十字に
保護される。そのご両親と再会し、1952年一家揃ってアメリカに移住。ブルック
リンのプラット学院で学び、1955年アーノルド・ローベルと結婚。卒業後テキス
タイル・デザイナーになる。
 夫アーノルドの編集者に勧められ、絵本制作を始める。女優、歌手としても活躍。

☆自作の絵本
○1965(再版1992)「スヴェンさんの橋」松井るり子訳 セーラー出版 1993
初めての絵本。きれいな色使いが印象的。枠に描かれた装飾的な絵も美しい。

○1967「じゃがいもかあさん」今江祥智訳 偕成社 1982
黒・赤・青のみで描かれた昔話風の絵本。戦争をする人間の愚かさがうまく表現さ
れている。

○1973「おひめさまのたんじょうび」猪熊葉子訳 文化出版局 1974
お姫さまが本当の幸せをつかむ話。風刺がきいている。

○1983「わらむすめ」松井るり子訳 セーラー出版 1991
女の子が知恵をしぼって、三人の泥棒をやっつける痛快な絵本。

○1990「アリスンの百日草」セーラー出版編集部訳 セーラー出版 1992
少女の名前と動詞と花の名前が、AからZまで流れるようにつなげたABC絵本。
1年以上かけて描いたという花の絵がみごとな絵本。

○1994「ABC旅の絵本」青木久子訳 セーラー出版 1996
各ページが舞台の1場面になる構成で、背景にはその町の特徴的な景色が描かれ
ている。その中には避難民としての経験もさりげなく描かれている。

☆アーノルド・ローベルとの共作絵本(アーノルドが文を担当)

○1977「おんどりぬすっと」うちだりさこ訳 偕成社 1982
雄鶏とぬすっとの対決が楽しい昔話風の絵本。

○1979「りんごのきにこぶたがなったら」佐藤涼子訳 評論社 1980
ブタが木になっている場面は思わず笑ってしまう。お百姓とおかみさんのやりと
りがとにかく楽しい。

○1981「ABCのおかいもの」偕成社編集部訳 偕成社 1985
頭文字が同じ品物でできた不思議な人物が、AからZまで登場する。色使いがき
れい。(コルデコット賞次席)

○1984「わたしの庭のバラの花」松井るり子訳 セーラー出版 1993
積み上げ歌になっているが、終わり方がユニーク。
二人の作品はどれもユーモアにあふれていて、息がぴったり合っている印象を受
ける。

☆その他の絵本として、「ちいさな木ぼりのおひゃくしょうさん」「ピー
ター・ペニーのダンス」「クリスマス・イブのこと」「アンナの赤いオー
バー」「こもりうた」「毛皮ひめ」「おかあさん」
などがある。
☆1998「きれいな絵なんかなかった」小島希里訳 ポプラ社 2002
子どもの日々を鮮やかに甦らせている記録。この中に出てくるばあやの姿はい
くつかの作品に投影されているという。

*アニタ・ローベルは、絵本1つ1つを舞台のように考えてつくっているとい
います。そこには女優としての経験が生かされているようです。全体的に見る
と、1冊1冊の絵本がとても丁寧に作られていることがよくわかります。絵の
緻密さ、装飾的な美しさは、テキスタイル・デザイナーとしての経験によると
ころが多そうです。

 9月は元永定正さんの絵本を読みます。


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181 5月号
みて見て!読んでみて!みどりの絵本の会 玉井万里
 
4月は、トミー・ウンゲラーの絵本を読みました。トミー・ウンゲラーは、
1931年フランス(アルザス)生まれ。第2次世界大戦で苦しい経験(ドイツ軍
の占領下におかれる)をし、ヨーロッパを放浪の後、1956年ニューヨークに渡
る。画家・漫画家・絵本作家・広告美術家・デザイナーとして幅広く活躍。現
在はアイルランドに在住。
*絵本
『メロップスのわくわく大冒険1』メロップスのわくわく大冒険2』麻生久
美訳 評論社 1986 最初の絵本「メロップス一家、空へ」(1957)を含むブタ
の一家の冒険を描いたシリーズ。淡い色彩でマンガ風なタッチ。ストーリーも
楽しい。
○1958『へびのクリクター』中野完二訳 文化出版局 1974 人に嫌われるこ
との多いへびが主役。クリクターが文字や数字になったり、子ども達と遊ぶ様
子が楽しい。使用されている色も少なくシンプルなタッチの絵だが温かさが伝
わってくる。
○1960『たことせんちょう』ウェザヒル翻訳委員会訳 ウェザヒル出版社 
1966/『エーミールくんがんばる』今江祥智訳 文化出版局 1975
 2冊を読み比べてみると訳によって、ずいぶん雰囲気が違うのがわかる。前
者のきまじめな訳より後者の力の抜けた訳の方が、この話にはあっているよう
な気がする。たこのエーミールくんの自由自在な動きが楽しい絵本。
○1961『こうもりのルーファス』はぎたにことこ訳 岩崎書店 1994
○1961『すてきな三にんぐみ』いまえよしとも訳 偕成社 1969(愛蔵ミニ版
1990 ビックブック2001)こわいはずの泥棒たちが集めてきた捨て子やみなし
ごのためにお城を買い、一緒に暮らすという夢のある絵本。黒い色をうまく使
い、赤・黄・青の三色を浮き立たせている。
○1962『かたつむりみつけた』五味太郎訳 架空社 1987 かたつむりの形が
色々な絵の中に描かれ、ほとんど文字のない絵本。
○1964『くつくつみつけた』五味太郎訳 架空社 1987
○1966『はげたかオルランドはとぶ』今江祥智訳 文化出版局 1975
○1966『月おとこ』たむらりゅういち・あそうくみこ訳 評論社 1987
○1966『のっぽとちび』バーナラ・ブレーナー文 やまねみずよ訳 ほるぷ出
版 1976
○1966『ワニのワーウィック』アンダー・ボディア文 平賀悦子訳 講談社 
1972
○1967『ゼラルダと人喰い鬼』たむらりゅういち・あそうくみこ訳 評論社 
1977 人喰い鬼が料理好きのゼラルダと会ってからの変わり様を楽しめる絵
本。ゼラルダの作る料理がとにかくゴージャス。
○1967『かめのスープはおいしいぞ』アンドレ・オデール文 いけうちおさむ
訳 ほるぷ出版 1985
○1969『魔術師の弟子』バーバラ・ヘイズン文 たむらりゅういち・あそうく
みこ訳 評論社 1977
○1970『ぼうし』たむらりゅういち・あそうくみこ訳 評論社 1977
○1971『ラシーヌおじさんとふしぎな動物』たむらりゅういち・あそうくみこ
訳 評論社 1977
○1973『キスなんてだいきらい』矢川澄子訳 文化出版局 1974 鉛筆で描か
れた絵。自伝的な作品と言われている。
○1974『マッチ売りの少女アルメット』谷川俊太郎訳 集英社 1982
○1997『フリックス』今江祥智訳 BL出版 2002 23年ぶりの新作絵本。猫
の夫婦から犬が生まれるという風刺が効いた作品。カラーインクで描かれた絵
がきれい。
*さし絵
1964『ぺちゃんこスタンレー』さくまゆみこ訳 あすなろ書房 1998
1978『ハイジ(1)遊んで、学んで、旅をして』『ハイジ(2)学んだことが役に立
つ日々』
山本太郎訳 文化出版局 1981

 トミー・ウンゲラーの絵本の主人公は、ぶた、へび、たこ、はげたか、こう
もり、輪に、泥棒に人喰い鬼と一風変わっています。およそ主人公になりそう
にもない生き物たちを、アイデアを生かして活躍させる手法は、見事と言うし
かありません。風刺を効かせたり、ブラックユーモアを感じさせる作品世界
は、とても豊で目が離せません。これから発表される絵本にも期待したいと思
います。

 5月は、トミー・デ・パオラの絵本です。

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178 2月号
みて見て!読んでみて!みどりの絵本の会
玉井万里

 1月は、こいでやすこ(小出保子)さんの絵本を読んでみました。
 1938年福島県に生まれる。桑沢デザイン研究所卒業。卒業後、インテリアデ
ザインや、グラフィックデザイン、本のレイアウト、装丁などの仕事を経て、
絵本の世界に入る。

 初期の絵本には、こいでたんさんとの共作のものが多い。
「ほおずきまつり」(筆名 千江豊夫)アリス館1977
「おおかみこわい」佑学社1983
「ちびねこのちょび」福音館書店1984
「ジャンジャカはかせとちびきょうりゅう」小峰書店1985
「なぞなぞかけた」小峰書店1985
☆3びきのねずみシリーズ
「とんとんとめてくださいな」福音館書店1981(ハード版1992)
「ゆきのひのゆうびんやさん」 〃 1987(1992)
「はるですはるのおおそうじ」 〃 1989(1993)
「とてもとてもあついひ」 
〃 1990(1993)
 このシリーズは、ねずみの性格を絵で描き分けている。ねずみの子に名前は
ついていないが、赤・青・黄と身につけているもので区別ができ、赤い子の行
動がとぼけていて楽しい。絵は家の中の家具・小物にいたるまでとてもていね
いに描かれている。
「とんとんとめてくださいな」で、1986年オランダ絵本賞銀の石賞を受賞。

自作の絵本
☆もぐらのこももシリーズ
「こもものおうち」
福音館書店1993
「こもものふゆじたく」 〃 1993
「こもものともだち」 〃 1993
もぐらのこももが穴を掘って作ったうちの、いろんなことがおこる楽しいおはなし。

☆きつねのきっこシリーズ(こどものとも)
「やまこえのこえかわこえて」福音館書店 1992(2001)
「おなべおなべにえたかな」 〃 1995(1997)
「おおさむこさむ」 〃 2001
 きつねのきっこといたちのちいとにいが登場する季節感あるおはなしのシ
リーズ。今年に4冊目が出る予定。

☆なっちゃんシリーズ(こどものとも年少版)
「かさかしてあげる」福音館書店1996(2002)
「むんむんあついひ」 〃 1999
 なっちゃんとけんたくん、犬のジョンが出てくる小さい子向けのおはなしの
シリーズ。なっちゃんのキャラクターとしても魅力が今ひとつ、という感想が
あった。

☆その他
「もりのひなまつり」
福音館書店1992(2000)
「きょうはちょうどよいひより」 〃 1997
「かくれんぼおに」ぎょうせい1992
「はなづくりのまろ」 〃 1992
「どろんこーん」 〃 1993
 今回福音館書店以外の絵本はほとんど目を通すことができなかったのです
が、自作の絵本に比べると、こいでたんさんとの共作“3びきのねずみシリー
ズ”の方が、おはなしとしても、細かく描きこんだ絵にしても、おもしろいの
ではという話になりました。
 
 2月は手島圭三郎さんの絵本です。

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みて!見て!読んでみて!
ーみどりの絵本の会ー
 三輪ゆうこ
 
今年最後の会合は、寒かったためか集まりが少なく、残念でした。
 今回はドーレア夫妻の本を読みました。彼等の本は日本では5冊出されてい
ます。
 代表作『オーラのたび』は 寒い冬にぴったりの本で、その絵本を読むのに
ちょうど良い季節というのもあるようです。オーラ少年を主人公に。ノル
ウェーの生活を描いたものです。文と絵が見事に調和している力作です。作者
は後に生まれた長男をペール・オーラと名づけています。
 『ひよこのかずはかぞえるな』は昔話を元にしています。鳥や動物が生き生
きとユーモラスに描かれ、最後の主人公のおばさんの言葉にホッとしてホロッ
とさせられます。
 『トロ−ルものがたり』は夫婦の3人の子ども、オーラ、エミリー、ニルス
と猫に捧げられています。大昔ノルウェーの山奥に住んでいたトロールについ
て語られます。この文章の多さは。小さな子ども向けではありませんが、絵も
文もとても読み応えがある傑作です。
 『トロ−ルのばけものどり』はトロールが飼っていた大きな鳥が、村の家畜
をさらっていこうとした時、突風にふきとばされて死んでしまう話。トロール
鳥は大きなローストチキンになってしまうところが何ともワイルドです。
 『まいごのフォクシー』は、実際にあった話をもとに作られたサーカス犬の
話。犬の仕草や表情が素晴らしく、見返しまでちゃんとストーリーが考えてあ
る楽しい本です。
 ドーレア夫妻は、アメリカで『リンカーン』で1940年のコールデコット賞を
受けています。
 1898年生まれの夫エドガーはスイス生まれ、ヨーロッパで育ちます。1904年
生まれの妻イングリッドはノルウェー生まれで、2人はパリの美術学校で知り
合い結婚します。1929年に二人はアメリカに移り、子どもの本の書評家アン・
キャロル・ムーアのすすめで絵本の共作をすることになります。
 ドーレア夫妻の絵本はすべて石版画の手法で作られているのが特徴ですが、
これは大変手間のかかるものです。しかしそれが他の絵本作家とは全く異なっ
てすばらしい絵の世界を作り出し、子どもだけではなく、大人の感性をも満足
させてくれる作品にしています。

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みて見て!読んでみて!
みどりの絵本の会・7月 三輪ゆうこ

バーバラ・クーニー

 
 8年前にも、1度バーバラ・クーニーの絵本を読みましたが、今回は出席者
の顔ぶれも変わり、本も多く集まったので、また新しい気持ちで読み合うこと
ができました。
 バーバラ・クーニーは1917年に、ニューヨークのブルックリンで生まれ
ました。母親が画家であった影響で、幼い頃から絵を描いていました。カレッ
ジで美術史を専攻、アート・スチューデント・リーグに通い、イラストレー
ションの技術を習います。
 1940年から本の挿絵を描きはじめますが、第2次世界大戦中の1942
年には陸軍婦人部隊に入っています。1949年に医者のポーター博士と再婚
し、それ以来ずっとマサチューセッツ州ペパレルの大きな家に住んで、子育て
と家事をしながら、イラストレーションの仕事を続けました。子育てを終えて
から、メイン州の海の近くタマリスコットに住んでいます。
 1959年に『チャンティクリアときつね』で、1980年に『にぐるまひ
いて』
でコールデコット賞を受賞。1983年に『ルピナスさん』がニュー
ヨーク・タイムズのベスト・ブックに選ばれています。

 出席した人たちにクーニーの絵本の中で好きな作品をあげてもらいました。

・野村さん
『おおきななみ』
B.クーニー作/掛川恭子訳/ほるぷ出版
『おもいでのクリスマスツリー』グロリア・ヒューストン文/B.クーニー絵
/吉田新一訳/ほるぷ出版
・玉井さん
『満月をまって』メアリー・ソン・レイ文/B.クーニー絵/掛川恭子訳/あ
すなろ出版
『にぐるまひいて』ドナルド・ホール文/B.クーニー絵/もきかずこ訳/ほ
るぷ出版

・三上さん
『空がレースにみえるとき』
エリノア・ホロウィッツ文/B.クーニー絵/白
石かずこ訳/ほるぷ出版
『おつきさんどうしたの』E・M・ブレストン文/B.クーニー絵/岸田衿子
訳/ほるぷ出版

・長谷川さん
『ルピナスさん』
B.クーニー/掛川恭子訳/ほるぷ出版
『ちいさな女の子のうた わたしはちいさなさくらんぼ』デルモア・シュクル
ツ文/B.クーニー絵/白石かずこ訳/ほるぷ出版

・三輪
『ぼくの島』
B.クーニー/掛川恭子訳/ほるぷ出版
『おさらをあわらなかったおじさん』フィリス・クラジフスキー文/B.クー
ニー絵/光吉夏弥訳/岩波書店

 クーニーが挿絵を描いた本の文章は、物語がしっかりしています。先月読ん
だマーガレット・ワイズ・ブラウンの作品もあります。
『ちいさなもみのき』上条由美子訳/福音館書店
『どこへいってた?』内田莉莎子訳/童話館出版
 グリム童話の挿絵も素晴らしい出来です。
『しらゆきべにばら』鈴木晶訳/ほるぷ出版
『ロバの王子』M・ジーン・クレイグ再話/もきかずこ訳/ほるぷ出版

 自作の作品は少し文が長く、小さな子ども向けではない感じもしますが、絵
が上手で、人や自然の描写が細かいところまで描かれ、色も美しく、気力あふ
れる筆致で、見る者を引き込んでいきます。
 クーニーの作品の素晴らしさに、しばし暑さも忘れ、熱い時間を過ごしまし
た。

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みて見て!読んでみて!6月みどりの絵本の会 玉井万里

 6月は、アメリカの絵本の黄金時代を築いた絵本作家の一人、ロバート・
マックロフスキーを取り上げました。
 作品の数は多くはありませんが、一作一作がとてもていねいに作られている
という印象を受けます。

○1940『ハーモニカのめいじん レンティル』まさきるりこ訳 国土社 2000
 子ども時代の経験や思い出をもとにして描かれているといわれている。ハー
モニカの好きなレンティル少年とカーター大佐の交流が楽しい絵本。高校時代
は近所の子どもたちにハーモニカを教えていたという。
○1941『かもさんおとおり』渡辺茂男訳 福音館書店 1965
 ボストンの街並と、かもの親子の様子がユーモアたっぷりに描かれている。
親切なお巡りさんマイケルとの交流も、ほほえましい。
 自宅でもかもを飼って生態観察をしたというエピソードは有名。かもの姿や
けしきがリアルなのは、マックロフスキーがすぐれた観察者だということが言
えると思う。(コールデコット賞受賞)
○1948『サリーのこけももつみ』石井桃子訳 岩波書店 1976/大判1986
 サリー親子と熊の親子の様子を、うまく対比して描いているので、絵にリズ
ムがある。サリーのしぐさがとても愛らしくほほえましい。ダークブルー一色
のペンで細かく描かれた絵はこのおはなしにぴったり合っている。
○1952『海べのあさ』石井桃子訳 岩波書店 1978
 「こけももつみ」のときのサリーと比べると、少女の成長を深く感じること
ができる。妹のジェインや父親とのやりとりも、きめ細かく描かれている。動
物との交流も楽しく、風景も美しい。
○1957『すばらしいとき』渡辺茂男訳 福音館書店 1978
 文章は詩的で、春から夏の終わりまでの島とそのまわりの自然の様子が淡い
水彩で雄大に描かれている。
 荒れくるう嵐の場面には迫力があり、その後の静かさとの対比はあざやか。
豊かな世界が息づいている美しい絵本。数年前に見た原画もすてきだった。
(コールデコット賞受賞)
○1963『沖釣り漁師バートダウじいさん』渡辺茂男訳 ほるぷ出版 1978/童
話館出版 1995

 引退した元漁師が、鯨にのみこまれるという昔話風のおはなし。マックロフ
スキーの作品にはめずらしいストーリー性のある絵本。「老人と海」をちょっ
と思い出させる。
 ピンクの色が目立つ楽しい絵本。
○1943『ゆかいなホーマーくん』石井桃子訳 岩波書店 1965/少年文庫 
2000
○1951『Centerberg Tales』未訳
○1953『ころりんケーキほーい』(挿し絵)山田純一訳 ポプラ社

 全体を通してみると、実際に体験したことが作品に生かされていいることが
よくわかります。自然の中での人間のいとなみ、動物との交流など、毎日の生
活の中で忘れかけていることを思い出させてくれます。

 7月はバーバラ・クーニーです。

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みて見てよんでみて!5月 みどりの絵本の会  三上由佳里

 今回は、3つのペンネームを持つ美貌の絵本作家マーガレット・ワイズ・ブ
ラウンを取り上げました。
 6歳の上の子が2歳くらいの頃に『どこへいってた?』『あかいひかりみ
どりのひかり』
に出会って以来、私にとっては大好きな作家の一人です。
 彼女についての資料は少なく、唯一『絵本図書館』(光吉夏弥著 ブックグ
ローブ社)に詳しくでています。それによると、1910年にニューヨークのブ
ルックリンで生まれました。子どもの頃移り住んだロングアイランドでは、自
然に恵まれた森や浜辺で遊び、ウサギやリス、犬などの多くの動物たちに囲ま
れて育ち、このような幼い頃の環境が彼女の作品に大きく影響しているようで
す。
 『ちいさなしま』(レナード・ワイスガード絵 谷川俊太郎訳 童話館出
版)はアメリカで大ヒットした作品で。1947年に絵本の最高の栄誉であるコー
ルデコット賞を受賞しています。大海に浮かぶ小さな島の移ろいゆく四季の自
然と、その中での動物たちの営みを描き、島と子猫の会話を通して世界に連な
りながら、自分の世界をもって生き、在ることを語った絵本です。自然の恵み
をとらえる彼女の観点のすばらしさ、感性の豊かさを感じます。
 1937年27歳の時に最初の本を出版して以来、すぐれた画家と組んで、1952年
に44歳の若さで亡くなるまで、100冊以上もの絵本をこの世に送り出しまし
た。日本で翻訳されたものは30冊ほどあります。全部を書き出したいのです
が、そのうち今回話題になったものと私が個人的に好きな作品を紹介しておき
ます。

*『おやすみなさいのほん』ジャン・シャロー絵 いしいももこ訳 福音館書店
 これはよく話題になる本です。2人の天使が手を広げ、子どもたちが神様に
「わたしたちをお守りください」とお祈りする場面に、ひっかかる人が多いよ
うです。宗教の本は受け入れられないとよく聞きます。私はいつも残念だなあ
と思っていました。この本では作家がキリスト教徒であったから、そのように
描かれてはいるけれども、小さい子どもたちにとっては、眠りにつく前に何か
大いなるものに身をゆだね、お守りくださいと祈るという行為はとても自然な
事ではないかと思います。こういう宗教性というものは直接“○○教”という
ものに接していない大人たちの中には、埋もれてしまっているかもしれませ
ん。けれどもこの世に出てきたばかりの小さい子どもたちの中には、まだまだ
多くを占めているように感じます。できれば人間の営みの大切なこととしてと
らえて、子どもたちに読んであげてほしいと思います。

*『せんろはつづくよ』
  ジャン・シャロー絵 与田準一訳 岩波書店

 若いモーリス・センダックが激賞を惜しまなかった本です。「マーガレッ
ト・W・ブラウンのこの物語は、控えめな傑作といってもいいものである。
ジャン・シャローは、それとぴったり調子をあわせている。その絵は単にこの
本の外観を高めているだけではない。言葉との完全な調和をおいて生きてい
る。私はこの本を本作りの“奇跡”に興味を持つ人たちにだれでも心から推奨
したい。」(『センダックの絵本論』モーリス・センダック著 岩波書店)

*『まんげつのよるまでまちなさい』
  ガース・ウィリアムス絵 松岡享子訳 ペンギン社

 あらいぐまのぼうやが「夜を見たい」「ふくろうをみたい」と言いますが、
お母さんは「まんげつになるまでまちなさい」とその度に待つよう何度も言い
ます。後書きの中で訳者である松岡享子さんがすてきなコメントをしていま
す。「子どもには、待たなければならないことがどんなに多いことでしょう。
(中略)この本の主人公のあらいぐまのぼうやもお母さんの言いつけを守って
待ちました。待って待って、待ちきれなくなって、母親に向かって宣言したそ
の時が実は母親が定めたとき、自然の条件が整ったときとぴったり一致してい
たのです。その幸せ!ー内なるときと外のとき」この世の営みと月の満ち欠け
のリズムはつながっているように思います。そんな中で、いつも待たされる子
どもたち、自然界の中で生きている子どもたちは、この本にとても共感をおぼ
えるようです。

*『おおきなあかいなや』
   フェリシア・ボンド絵 江國香織訳 偕成社

 彼女は絵心のあった人で画家に対しても厳しかったと言われています。何度
も打ち合わせをして、絵が決まるとイラストに合わせて文字を移動したりも
あったそうです。この本は初版が1989年で彼女の死亡後40年近くたってからの
出版です。イラストもずいぶん新しい印象があり、私は表紙をぱっと見た時、
あまりにもイメージが違うので手にとろうとは思いませんでした。今回、図書
館で借りて、子どもたちに読みきかせたところ、言葉の中に彼女独特の詩的で
しずかな雰囲気が流れていて、やはり彼女の作品だと思いました。でももし生
前にイラストがつけらてれいたらどんなだっただろうと思います。そういう意
味では彼女の生きている間に出版された本と亡くなった後のものとでは、違い
があるのかなと、比べてみたくなりました。
*『どこへいってた?』
   バーバラ・クーニー絵 内田茉莉子訳 童話館出版

 「ねこねこ どこへいってた?あっちきょろきょろ こっちきょろきょろ 
ぶらぶらしてた」ではじまり、ページをめくるたびにいろいろな動物たちに変
わっていきます。繰り返しの絵本なので小さい子どもたちにぴったりです。マ
ザーグースをみていたら似ている詩がありました。「ねこねこ どこへいって
きた? ロンドンで女王にあってきた」(ターシャ・チューダーのマザーグー
ス 山田詩子訳 フェリシモ出版)この詩からできたのかもしれませんね。

*『ぼくはあるいたまっすぐまっすぐ』
   坪井郁美文 林明子絵 ペンギン社

 この絵本は、『Willie's Adventures』に収められている「Willie's Walk」
をもとに創られたのだそうです。やはり、マザーグースに「ウィリーぼうやど
こいくの?いっしょにいってもいいかしら くさかりをみにまきばにいくの」
という詩があります。何か通じるものがあると感じるのは、私だけでしょう
か?
*『ちゃいろのうさぎとしろいうさぎ』
   ガース・ウィリアムズ絵 中川健蔵訳 文化出版局

「春だ、春だ、春だ」とかえる、やまねずみ、こまどりが春が来た事への喜び
を全身で歌います。原語では「Spring,Spring」と歌う音によって、まだでて
こないウサギのはねる様子がイメージできます。言葉の持つ響きをあやつって
お話を作る彼女の遊び心にも魅力を感じます。

*『きこえる きこえる』 レナード・ワイスガード絵 吉上恭太訳 小峰書店
 『きこえる きこえる なつおのと』 レナード・ワイスガード絵 吉上恭太訳 小峰書店
 『きこえる きこえる ふゆのおと』 チャールズ・G ・ショー絵 吉上恭太訳 小峰書店
 『しずかでにぎやかなほん』 レナード・ワイスガード絵 谷川俊太郎訳 童話館出版

 これらの「イメージ・ブック」といわれるシリーズは、1940年代、アメリカ
で大ヒットした子どもの感覚を大切にした絵本です。目に包帯をした子犬のマ
フィンが、音を聞きながらあちこち歩きまわり、それが何かをあてます。「雪
がふりだしました。でもマフィンには聞こえるでしょうか?」という問いもあ
り、子どもたちの感覚にうったえかけます。幼い子どものための本は全ての感
覚にアピールするものでなければならないというのが、彼女の絵本作家として
の考えでした。その感覚主義の見事な作品です。

*『ぼくにげちゃうよ』クレメント・ハード絵 岩田みみ訳 ほるぷ出版
 『おやすみなさいのほん』クレメント・ハード絵 瀬田貞二訳 評論社

 この2冊はあまりにも有名で紹介するほどでもないのですが、これらの絵本
にもマザーグースの「めうしがお月様を飛びこす絵」が出てきます。やはり欧
米の子どもたちにとってマザーグースは非常に身近なものなのでしょうね。

 今まで漠然と子どもたちに読みきかせて、なんとなく彼女の文章が好きだっ
たので、どうして好きなんだろうと少し整理してみました。まず作品の良さ
は、一人で読んでいるだけではわかりませんでした。子どもたちに声を出して
読んであげて。その瞬間をいっしょに味わうことで、いいなーと感じることが
できました。それはやはり、子どもの目を通すことが大事で、大人の私たちが
忘れてしまったところで感じるもの、感性を呼びおこしてくれるように思いま
した。そして、詩的な言葉を通して子どもたちに“生きるということ”を語っ
てくれるのです。私は改めて子どもたちのピュアな魂とその感性やふるまい、
新鮮な感動を大事にしてあげたいと感じました。

 来月は、ロバート・マックロフスキーです。おたのしみに。

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みて見て読んでみて  みどりの絵本の会 2月

三上由佳里

スズキコージの絵本
 数あるスズキさんの作品の中から。絵本の会の時に話題になったもの、個人
的に興味を持ったものを紹介します。
●「てのひらのほくろ村」理論社 1987年
 これは自らの幼少時代を書いたエッセイです。“赤ちゃんの時、ひょっとし
て生まれて一番最初の時、木のたらいで沐浴をしてもらっているいごこちのよ
さが、一番古くて今でも新鮮な記憶”とあるのが印象的でした。その後、小学
校卒業までの出会った人々、体験等、こまかく書かれています。自分で何度も
読み返して笑ってしまうんですって。スズキコージの世界の底に流れている源
のようなものが、随所に感じられました。
●「大千世界のなかまたち」福音館書店 1985年
 スズキさんの子どもの頃からの目には見えない多くのなかまたちがたくさん
紹介されています。
●「ガラスめだまときんのつののやぎ」白ロシア民話 田中かな子訳 福音館
書店 1988年
 作品のつくり方がおもしろいんです。表紙の題字は麻ひも(?)でつくられ
ていて、絵自体も模様や英字の入った紙、新聞・雑誌をちぎって貼ってあり、
その上から描きこまれてあったりと、どうやってつくったのだろうながめてい
るだけで楽しいです。
●「つえつきばあさん」ビリケン出版 2000年
 色鉛筆のようなもので描かれていて、スズキさんの作品にしてはやさしい色
調の絵本だなあという感じがしました。お話はとってもゾロゾロガヤガヤして
ますが。
●「ひつじかいとうさぎ」ラトビア民話 うちだりさこ再話 福音館書店 
1975年
 同じような民話が他にもあります。フェリクス・ホフマンの「ヨッケリなし
をとってこい」や、ポール・ガルトンの「おばあさんとこぶた」がそうです。
はじまりはのどかで美しく、いなくいなったうさぎを羊飼いがさがしているの
ですが、途中火や水が出てくるとだんだん迫力が出てくる。最後に熊から次々
に順番におそいかかっていく場面では、うちの子どもたちはこわがっていまし
た。
●「注文の多い料理店」宮沢賢治原作 ミキハウス 1987年
●「かぞえうたのほん」岸田衿子作 福音館書店 1990年
 スズキさんの絵本の特色の1つでもある文字は、「キダかな」という字体の
写植文字が使われています。
●「天とくっついた島」立松和平文 河出書房新社 1997年
●「ノガモのうた」(世界の民話絵本・アメリカ)木島始文 ほるぷ出版 
1992年
●「きゅうりさんあぶないよ」福音館書店
 一緒の参加した3才の女の子が、「きゅうりさんあぶないよ」と言いながら
一人でこの絵本を見ていたのが、かわいかったです。

 どの絵本もたいてい見返しがすばらしく、自分でも「見返しと裏表紙がいい
ですね」と片山健さんとの対談の中で言っています。
 どちらかというと、今まであまり手にしなかったスズキコージさんの絵本で
すが、こうして集めてみると、何だか親しみを感じてしまいました。
 3月は梶山俊夫さんです。  

●スズキコージのホームページ http://www.zuking.com/
アニメーションが多用され、「つえつきばあさん」が歩いていくところなども
見られます。

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みて見て読んでみて みどりの絵本の会
玉井万里

西村繁男の絵本
 今月取り上げた西村さんは、小学校のころ図画の授業でお祭りや工事現場の
絵を良く描いていたといいます。そのことが今の仕事にもつながっているよう
な気がします。
○初期の自作絵本
「やこうれっしゃ」福音館書店 こどものとも1980(傑作集1983)、「おふろ
やさん」
福音館書店 1977(1983)、「にちよういち」童心社 1979などは自
ら観察絵本と名付けている作風の絵本です。細かくたんねんに描きこまれた絵
は、色々な発見があって楽しめます。「にちよういち」は作者の生まれ故郷の
土佐弁で描かれています。(厚生省児童福祉文化賞受賞)
「絵で見る日本の歴史」福音館書店1985はおよそ10万年前の石器時代から
現代までの歴史を絵巻風に描いています。1974年に「絵巻展」を見たのがきっ
かけで、独自に日本画の技法を学びながら、絵本を描いてきた西村さんにとっ
ての代表作のひとつだと思います。(絵本にっぽん大賞受賞)
「絵で見る広島の原爆」那須正幹文 福音館書店 1995は1945年に広島に落
とされた原爆について、多角的な視点で描いています。西村さんの強い思いが
伝わってくる作品です。田中利幸・ジョアンナ・キング訳の英語版1998もあり
ます。
○最新作の「ピチクルピチクル」(花鳥風月絵本)童心社 2001は、一見する
と西村さんの作品とは思えないほど、今までと作風が違います。全部擬音で書
かれた文章と抑えた色調の版画の絵が小さな生き物の世界を魅力的に表現して
います。
その他の作品
「くずのはやまのきつね」大友康男・西村繁男作 福音館書店 1974
「おとうさんといっしょに」白石清春作 いまきみち・西村繁男絵 福音館
書店 1987(1993)
「もうすぐおしょうがつ」福音館書店 1989(特装版1997)お正月を迎える
ための準備のことがよくわかる貴重な行事絵本。
「10才のとき」高橋幸子聞き手 大木茂写真 西村繁男絵 福音館書店 た
くさんのふしぎ 1991
「ぼくらの地図旅行」那須正幹文 福音館書店 1989
「みんなであそぼう」有木昭文案 福音館書店 1995 遊びのヒントがたく
さんつまっていて、細かく絵を見ると発見がある楽しい絵本。
「なきむしようちえん」長崎源之助作 童心社 1983
「はらっぱ」神戸光男構成・文 童心社 1997
「がたごとがたごと」 内田麟太郎文 童心社 1999
「きのぼりとかげへおくりもの」今関信子作 朔北社 2001
「ぶらぶらばあさん」馬淵公介作 小学館 1996

2月はスズキコージさんの絵本を読みます。

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みて見て!読んでみて!ーみどりの絵本の会ー
みどりの絵本の会
三上由佳里
ー田島征彦さんー
 今まで私は、田島征彦さんの作品は『じごくのそうべい』しか知りませんで
した。でも、今回図書館で絵本やエッセイ、作品集を集めてみて、「こんなに
あったのー」というのと、また型絵染めの美しさと手間、作品自体の迫力に
びっくりしました。彼は自分の作品を“土俗的である”と表現しています。
 会の中では、集まった絵本の中から「これはどんなおはなし?」と、野村さ
んが『こたろう』を読んでくれました。みんな初めて見る作品でしたが、関西
弁による語り口調が特徴的でこっけいであり、場面がどんどん下に落ちていっ
てどこまでいくんだろーと思っていたら、地球の反対側の空にでてきて、そこ
はちゃんと異国の様子が描かれておもしろく、山や木等の高さのあらわし方が
すごいとなかなか好評でした。
 では、絵本関係の作品を紹介しておきます。(刊行順に)
・祇園祭(童心社76年)
 絵本としての処女作品で第6回世界絵本原画展金牌受賞
 7月1日から29日までのお祭りの流れが、1つ1つ描かれています。祭り
にいきおいや活気が感じられて「こんこんちきちん、こんちきちん…」と聞こ
えてきそうです。
・じごくのそうべえ(童心社78年)
 田島さんの絵本の中で一番人気があります。
・しばてんおりょう(あかね書房 今江祥智作)
・中岡はどこぜよ(すばる書房 関屋敏隆絵)
・創作民話ー島(童心社 さねとうあきら作 79年)
・火の笛ー祇園祭絵巻(童心社 西口克己共作 80年)
・やまたのおろち紙芝居(童心社 川崎大治作 80年)
・こたろう(偕成社 吉橋通夫作 81年)
・まんげつのはなし(河出書房新社 住井すゑ作 83年)
・あつおのぼうけん(童心社 吉村敬子共作 83年)
・はじめてふったゆき(偕成社 竹内智恵子共作 84年)
・てんにのぼったなまず(福音館書店 85年)

 おじいがふんどしに書いたなまずが空にのぼっていき、大きななまずが空を
泳ぐ様子がとても美しいです。
・とんとんみーときじむなー(童心社 89年)
 沖縄のガジュマルの木に宿っている木霊きじむなーの物語。
・そうべいごくらくへゆく(童心社 89年)
 お話しの中で田島さん自身が“えかきのゆきえもん”として登場。ユーモラ
スでおもしろいです。
・みみずのかんたろう(くもん出版 92年)
 作家の水上勉さんが福井県の若狭で竹紙を漉いておられます。その竹紙を型
絵染めで染めて、この絵本が作られました。作者が少年時代をおくった高知県
の山の中には「かんたろうみみず」と呼ばれる大きな青いみみずがいました。
このみみずが主人公です。
・ふたりはふたご(くもん出版 田島征三共作 96年)
 双子の弟征三さんとの少年時代のことを絵本にしたものです。
・からすじぞう(くもん出版 96年)
・てっぽうをもったキジムナー(童心社 98年)

 戦争中の沖縄を描いた作品。
・そうべいまっくろけのけ(童心社 98年)
・いたずらうさぎチェローチュ(童心社 99年)

 カンボジアの老人達から聞き書きされたむかし話をもとに作られました。

 エッセイ集は次の3冊です。「くちたんばのんのんき口丹波呑呑記」(晶文
社)、「王様が裸で歩いとるわ」(晶文社)、「丹波でいごっそう」(小学
館)。これはまだ少し読み始めたところですが、すごくおもしろいです。自分
のことを“いごっそう”というほどがんこなたちながら京都弁?丹波弁?での
家族やまわりの人たちとのやりとりがとても楽しいです。少年時代のことは、
征三さんが「絵の中のぼくの村」(くもん出版)に書いています。
 来月は降矢奈々さんを取り上げます。「めっきらもっきらどーんどん」
「きょだいなきょだいな」など子どもたちの大好きな絵本がいっぱいありそうです。

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みて見て!読んでみて!9月
みどりの絵本の会
のむらようこ
 今月は村上康成さんでした。丁度世田谷文学館でもテーマに取り上げてい
たこともあって、原画をみた後の興奮をそのままに会に臨みました。
 とにかくたくさんの作品を書かれています。いくつかに分類することが出来
るようです。一つは文章も自作の自然・キャンプ・釣り等をテーマにした絵
本。ピンク・シリーズも含みます。それから、中川たかひろ作のピーマン村シ
リーズやだじゃれシリーズ。
でも忘れられないのは、長谷川修平との共作かいじゅう・シリーズ。この2
人、名古屋の美術系予備校の同級生だそうでその頃からの構想を絵本にしたと
か。いつみてもじんわりしてしまう内容です。絵とテキストが一体になった作
品ならではの出来です。 沢をのぼり渓流釣りをする村上さんは、デフォルメ
しながらもその生き物たちの特徴をきちっとおさえて描いています。魚でも種
類を特定できるそうです。新作の『青いヤドカリ』はまた色使いが心に憎いば
かりに決まっている作品です。白・余白の使い方のうまい。好きな作家はつい
絶賛してしまいます。

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みて見て!読んでみて!ーみどりの絵本の会ー
玉井万里
 今月は、現代の絵師といわれる瀬川康男さんの絵本を読んでみました。1932年
生まれの瀬川さんは、1960年の「きつねのよめいり」(松谷みよ子再話 福音
館書店)を出版以来40年間、日本の代表的な絵本画家として活躍されています。
 まず野村さんの提案で、みんなが持ちよった絵本を発行年代順にざっと並べてみ
ました。最初から年代を追って見ていくと、絵の変遷がよくわかります。
 60年代、70年代は昔話や他の作家の創作に絵をつけた作品が多く見られます。
 日本のむかし話シリーズ 松谷みよ子文 講談社「はなさかじじい」「ももた
ろう」「したきりすずめ」「かちかちやま」「さるかに」「こぶとり」「ぼ
うさまの木」「たべられたやまんば」「ふしぎなたけのこ」
松野正子作 福音
館書店 1963年(BLBグランプリ受賞)「ばけくらべ」松谷みよ子作 福音館
書店 1964年「やまんばのにしき」松谷みよ子文 ポプラ社 1967年
その他に“松谷みよ子赤ちゃんの本”シリーズ(「いないいないばあ」「いい
おかお」
童心社 1967年)や「ことばあそびうた」谷川俊太郎詩 福音館書店
 1973年などがあります。
 この時代の作品も1冊1冊見ていくと画風に大きな変化が見られます。今回
「かちかちやま」のポプラ社版(1967年)と講談社版(1970年)の2冊を比べてみ
ましたが、かなり印象が違います。動物や背景の植物などの線に大きな変化が
あるし、色使いもずいぶんちがいます。この頃から見返しに植物などの細かい
書き込みが目立ちます。
 80年代に入ると、「ふたり」冨山房 1981年や「ぼうし」福音館書店 
1987年(絵本にっぽん大賞)など、次作の絵本が多くなります。やわらかな筆
のタッチから、ペンによる細かな線書きに変化していきます。80年代から9
0年代にかけては「絵本平家絵巻物語」(全9巻)ほるぷ出版の大きな仕事が
あります。
 90年代には幼児向けの絵本が多いようです。「だれかがよんだ」福音館書
店は、こどものとも年少版1990年と日本傑作絵本1992年の2冊を比べると、
ハードカバーで出版するときにかなり手を入れられていることもわかりました。
 全体を通して見た時、絵本作家としては文章が弱いのでは、という話もでま
した。絵描きという言葉が瀬川さんにいちばん似つかわしいかもしれません。
 最後に皆さんに好きな絵本をあげてもらいました。
野村さん:「ふしぎなたけのこ」(子どもの頃好きだった)
三輪さん:「かちかちやま」(講談社版)
三上さん:「ぼうさまの木」1971年
江崎さん:「かぜのかみとこども」山中恒作 フレーベル館 1972年
竹内さん:「ぼうし」
河野さん:「だれかがよんだ」(ここで読んでもらって楽しかった)
玉井:「ことばあそびうた」「ふたり」(ユーモアを感じる)

 9月は村上康成さんの絵本をとりあげます。9月9日まで世田谷文学館で
“村上康成 絵本の世界展”をやっています。ぜひのぞいてみませんか!


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みて見て!読んでみて!ーみどりの絵本の会ー
 三上由佳里

赤羽末吉『私の絵本論』を読んで


 前回は赤羽氏の世界を見てみましょうと、みんなで数冊ずつ持ちよってみま
した。そして今回は、エッセイ集等を読んでその人物像に迫ってみようという
事になりました。
 この『私の絵本論』というエッセイは、1983年に出版されたもので、内容と
しては@絵本に対する情熱をつづった絵本論、Aそれまで発表された絵本がで
きるまで、B他の作家の作品に対する評論、C中国に行ったときの紀行記、D
1980年に国際アンデルセン画家賞を受賞したときの挨拶、という構成になって
います。
 この中からいくつか印象に残ったテーマをとりあげてみます。

絵本風土論
 ご本人は長らく中国大陸にいたので、日本と大陸の風土の違いがよくわかっ
たそうです。「日本は80%が山で、70%近くの緑があり、雨が多い。そして湿
度が高い。」「杉・松の黒々しさ、霧のためにたなびく山々は美しく、晴れた
日より曇った日の美しい日本。しっとり濡れた雨の日の日本も格別である。」
と、日本の独特の風土によってあらわれてくる自然の美しさ。湿度のなかにあ
る美しさをたたえています。こうした中から「日本の文化が生まれ、墨絵が生
まれた」。彼の『かさじぞう』『つるにょうぼう』が生まれるゆえんです。対
照的に「乾いた黄色い大陸、自然の猛威がまっこうからぶつかってくる大地に
人間が足を踏ん張って、営々とたくましく生活している」ことへの感動が、
『スーホの白い馬』に結びつき、これが彼の風土追求の基本となっています。
「おおざっぱであるが、様々な文化の違いはこうした風土の違いにあるのだと
思う」と。私自身も日本の自然の美しさ、そこから生まれた独特の文化は大好
きです。やっぱり日本人でよかったと思い、ちょうど今まっさかりの梅雨のジ
トジトした時期も、日本の美しさの一つなんだと思うと、いいもんだなあと思
えてしまいます。
 最後に「さて私は、こうした数々の日本の特質を知って、その風土を追求
し、このなかの日本人の物語を、シカとかきたいと思うのである。」としめて
います。こんなにシッカリと日本のことを思って、作品を書いているというこ
とにとても感動しました。ますます日本が好きになったし、赤羽さんの作品は
全部見なきゃと思い、子どもたちとも一緒に楽しみたいと強く思ったのでし
た。

ストーリー・テリングと絵本
 ストーリー・テリングについては、今、私自身とても関心があり、これから
勉強したいと思っていることなので、興味深く読みました。
 松岡享子さんがホフマンの『七わのからす』をめぐって、『昔話を絵本にす
ること』という本を出しました。この松岡さんが「問題提起したことは貴重な
ことだ」といいながら、松岡さんの意見とともに、彼自身の分析を書いていま
す。主要な事柄は次のようなものでした。「文学を視覚化する時、制作者は原
作をどう解釈するかが一番重要だと思う」「絵なしにこの話を聞いたら、もっ
と深い不思議を味わうことができるのではないか」「昔話が絵本にされること
によって、子どもの受けとるものがちがってくる。子どもが当然受けとるはず
の意味が失われる場合もある」「ストーリー・テリングは、物語の子どもの心
に働きかける隠れた意味が伝えられるし、昔話のおもしろさ、ふしぎさ、美し
さ、子どもに訴える力の強さ、与える喜びの深さを知ることができる。」名作
だからといって、なんでも絵本にしたがる風潮を批判し、昔話を絵本にするこ
とのむずかしさを指摘しています。

『春のわかれ』の絵本ができるまで
 これは槇佐知子さんが「今昔物語」にある「小さき稚児を悼みて硯を割りし
侍出家せること」(巻19の9話)をもとに作品化した「硯」がもとになってい
ます。槇さんの文章の美しさに赤羽氏が感動して、日本の古典文学の美しさを
高校生に知ってほしいと、この絵本がうまれたそうです。さっそく図書館で借
りてみました。本当に美しいお話で、赤羽氏の絵も王朝文学にふさわしいすば
らしいものです。そして「こういう心理的なものは扱ったことがなく不安で
あったが、やってみると案外さらさらと、頭で考えているより、手がかいてく
れた。未知への探検、何でもぶつかれという気をあらためて確認した想いで
あった」といいます。こういうところにも、赤羽氏の魅力の1つがかくれてい
るなあと思いました。

紙と筆
 彼は作品を書く時、作品ごとに紙と筆をかえるのだそうです。「はじめて使
う紙、なれない筆で書くと、心をひきしめてかき、たどたどしい線になる。こ
ういうものはなにか訴えるものがあると思う。ナレで書く線はさけるのだ」。
すごいなあと思いました。なにか芸術に対してというか、読者(子どもたち)
に対して、とても謙虚な姿勢をもっていて、1枚1枚の絵に心がこめられてい
るなあと思いました。
 赤羽氏の日本や大陸に対する思い、絵本・昔話に対する思い、作品をつくる
ときの謙虚さ、彼自身のユーモア性、その他たくさんのことがいっしょになっ
て、赤羽末吉の世界がつくられたんだなあと思いました。そして、私は又『か
さじぞう』はほしいなあとか、『春のわかれ』もあるといいなあとか、家中に
絵本があふれているにもかかわらず、赤羽氏の作品がほしくなったのでした。

 さて来月(7月9日)は瀬川康男氏をとりあげます。赤羽氏とはとても仲が
よかったそうです。どん世界か、私自身詳しくないので楽しみです。

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みて見て!読んでみて!みどりの絵本の会

三輪ゆうこ

赤羽末吉の絵本


 赤羽末吉の作品を調べてみたら、『絵本の歴史を作った20人』(創元社)
に載っているだけで85冊。正直こんなに沢山あるとは思いませんでした。今
回みんなで持ちよったのが23冊。ほんの一部でしたが、目の前になくても、
以前子どもと読んだ作品が多くあるので、それを思い出しながら、楽しく読む
比べました。
 赤羽さんは50歳の時に『かさじぞう』(福音館書店)で、絵本デビューを
しています。それから30年、1990年に亡くなられるまで精力的に作品を
発表しています。
 今回読んでみて、赤羽作品は大きく5つのタイプに分けられることがわかり
ました。『かさじぞう』『ももたろう』(福音館書店)に代表される日本の昔
話。『スーホの白い馬』(福音館書店)『あかりの花』(福音館書店)のよう
な中国の話。『源平絵物語』(偕成社)のシリーズ、『日本の神話』(トモ企
画/あかね書房)シリーズ。『おへそがえるごん』(福音館書店/小学館)な
どの赤羽さんのオリジナル作品です。日本の昔話のさし絵で一般には広く知ら
れていますが、赤羽さんは戦前の生まれなら誰でも知っている日本の神話と源
平の戦いの話を、日本人の教養として今の子どもたちにも伝えたかったので
しょう。あまり知られていないこれらの本の絵は気迫にあふれています。
 赤羽さんの絵は、日本画の手法をもとにした独自の筆使い色使いが特色で
す。人や動物や鬼が、表情豊かに思い思いの姿で画の中で生きています。
 以前福音館書店から出版されていた横長の絵本『おへそがえるごん』の3冊
が、最近岩崎ちひろ美術館の編集協力で小学館から出版されました。しかし、
再構成されて2巻分を1冊のまとめて、普通のサイズの絵本、しかも1ページ
に3場面入れてしまうと、全然感じが違い、絵巻物語風という赤羽さんの趣旨
にも合っていないようなきがします。「どうして変えてしまったの?」私たち
のあいだでは不評でした。
 あまりに色々な作品があるので、各人1冊好きな本を選んでもらいました。
玉井さん:『お月さんお舟でおでかけなされ』神沢利子詩(童心社)
野村さん:『だいくとおにろく』松居直再話(福音館書店)
三上さん:『ほうまん池のカッパ』椋鳩十文(銀河社)
三輪:『絵本わらべうた』(偕成社)

三上さんが前回の佐野洋子の著作のリストを作ってきてくれました。この人の
30年間の作品の数も凄いです。

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みて見て!読んでみて!みどりの絵本の会 
江崎智美
 
今回は佐野洋子さんを取り上げました。彼女の絵や文章は誰もがどこかで一
度は目にしたことがあるでしょう。幼児向けの本、児童書、挿絵、エッセー、
朝日新聞の連載など、多方面で活躍されています。
 1938年に北京で生まれた佐野さんの作品は、ご自身の経験からなのか、美大
を経た多くの勉強の成果なのか、とても数多くの作品が出版されています。水
彩、リトグラフ、クレヨンなど、作風も様々で、豊富な引き出しをもってい
らっしゃる興味ある作家です。
 いろいろなところに登場する猫は(作者はきっと猫好きなのでしょう)、作
風が違ってもどこか共通するものが感じられます。ユーモアと寂しさを持っ
て、じっと本質を見つめるような目、やわらかくてやさしい体つき。そして、
文章もけっこうシビアで甘くない。だけど、どこかで人や世界と触れ合ってい
たいという感受性は、こちらを安心させます。

とりあげられた本
『100万回生きた猫』1977年 講談社
 ジーンとくるベストセラー。児童書コーナーでよくみかける絵本だが、大人
のための絵本とも思える内容の深さ。白猫の上品なかわいらしさと、100万
回生きた猫の泣いた顔のアップが印象的。
『おぼえていろよ おおきな木』1992年 講談社
 おおきな木がいつもじゃまだと思っていたおじさんが、木を失ってから大切
なものだと気づく「詩」のような本。タッチもやさしい。
『空とぶライオン』1993年 講談社
 水彩でのびのびとした筆遣いは、「長新太?」と思うようなかんじ。疲れ果
てたライオンが、こねこのことばで再び目覚めます。
『おじさんのかさ』1974年 銀河社/講談社
 お気に入りのかさがぬれないようにたたんで大切にしていたおじさん。ある
雨の日、楽しそうにしている子どもがきっかけで、かさを開き、楽しい発見を
して、変わるおじさん。
 読み聞かせをしてもらうと、クスッと笑ってしまうユーモアも、じっと一人
で考えると奥深いものを感じさせます。
『こども』1984年 リブロポート(絶版)
 彼女の北京での思い出がつづられている。幼少の頃から気が強く、意識の目
覚めが早い子どもだったと感じた。
 他には、とても色彩がきれいな『おばけサーカス』1980年銀河社、山本容子
風の絵の『ぺこぺこ』1993年文化出版局、猫がたくさんでてくる『猫ばっか』
1995年講談社、少女とおばあさんの時を超えた出会いが美しい『ともだちはモ
モー』
1983年リブロポート、等が話題にのぼりました。
 また、佐野さんは森山京、岸田今日子、住井すゑ、工藤直子、谷川俊太郎、
松谷みよ子、森茉莉さんなど、いろいろな人の作品に絵を描いている。そし
て、佐野さんのエッセーには息子の広瀬弦や沢野ひとしらが、挿絵を描いてい
ます。なにしろ数が多くて(173件)、いろいろな分野にわたっているの
で、時間が足りないくらいでした。1度全部の本を置いて、年代別、作家別に
分けてみるとおもしろいかもしれない、と皆でいいました。

上記以外の佐野洋子作絵の絵本
「すーちゃんとねこ」こぐま社、「わたしのぼうし」フレーベル館、「おれは
ねこだぜ」
偕成社、「さかな1ぴきなまのまま」フレーベル館、「あのひの音
だよおばあちゃん」
フレーベル館、
「ふつうのくま」文化出版局、「ぼくの鳥あげる」フレーベル館、「乙女ちゃ
ん」
大和書房、「サンタクロースはおばあさん」フレーベル館、「ねこいると
いいなあ」
小峰書店、「わたしクリスマスツリー」講談社、「おとうさんおは
なしして」
理論社など

次回5月21日は、むかしばなしなどが多い赤羽末吉さんをとりあげます。ど
んな発見があるか楽しみ!


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みて見て!読んでみて!みどりの絵本の会 3月
玉井万里

 先月に引き続き、安野光雅さんの絵本を取り上げました。今回は自分の好き
な本を持ちより、紹介してもらいました。

◎野村さん紹介の本
『10人のゆかいなひっこし』童話屋 1981年
絵をすみずみまで見て楽しめる絵本。あきずにながめられるしかけ絵本。

◎三輪さん紹介の本
『さよならさんかく』講談社 1981年
よく知られたわらべうたの絵本。上半分を最後まで読んで、ひっくり返すと、
またもとにもどってくる形になっている。全国に流布している「さよならさん
かく」が紹介されていて、それも楽しめます。安野さんの絵本は、武井武雄の
童画の流れをくんでいるような気がすると、武井さんのの絵本も紹介されまし
た。

◎三上さん紹介の本
『かげぼうし』冨山房 1976年
「マッチ売りの少女」がテーマになっている。一部に切り絵が使われていま
す。
『画集 野の花と小人たち』岩崎書店 1976年
四季折々の花と小人が描かれてた絵本。絵に添えられた文章も楽しめます。
(ハンディ版もでています。(1997年))
『蚤の市』童話屋 1983年
古い物と蚤の市に集まったたくさんの人たちが描かれている。物語の登場人物
や有名な絵の一部などがかくれていて、それを探す楽しみもあります。

◎玉井紹介の本
『おおきなもののすきなおうさま』講談社 1976年
大きな物が大好きな王様が、次々と引き起こす騒動を描いた物語。
『空想の絵本』講談社 1999年
1977年に出た『安野光雅の画集』(講談社)の絵の種明かしのための絵本。2
冊併せて読むとなおいっそう楽しめます。
『がまの油 贋作まっちうりの少女』岩崎書店 1976年
「マッチ売りの少女」と「がまの油売り」の2つを併せて一つにした不思議な
切り絵の物語。(70年代には、切り絵の手法を使った絵本を何冊か作っていま
す。)
『安野光雅の世界1974→2001』(別冊太陽)平凡社 2001年
安野さんの作品から70点を選び、挿絵をあとがきの抜粋を収録した本です。
安野さんの作品の幅広さを実感できる1冊。
 3月20日には安野さんの出身地、津和野に「安野光雅美術館」がオープン
したそうです。プラネタリウムもある科学的な視点も備えた美術館になるとの
こと。ぜひ行ってみたいです。

 4月は16日(月曜日)。テーマは佐野洋子さんです。佐野さんも沢山本が
あります。全体像を把握するのは大変ですが、まずはお気に入りの絵本を持ち
よりおしゃべりしましょう。
ではまた

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みて見て読んでみて!みどりの絵本の会 2月

三上由佳里


 今回のテーマは、安野光雅氏の作品という事で、野村さんにインターネット
で出して頂いた資料「旅の絵本を旅する」をもとに、解説をしてもらいながら
『旅の絵本』(福音館書店)をみんなで楽しみました。開くたびに新しい発見
がある不思議な絵本です。
 この絵本は1976年に描き上げられたもので安野氏がそれまでヨーロッパ
各地を巡った時の、主にドイツのロマンチック街道沿いの様々な風物・風景が
背景になっています。その中に名画や名作の一場面が隠されていて、それは絵
画、音楽、文学、映画、演劇、歴史と多岐の分野から引用されています。さら
に加えて、絵本の中の村や町に住んでいる人たち、働いている人たちの小さな
流れが描かれていて感心するとともに作者の遊び心に何かほっとさせられるあ
たたかさを感じたのでした。
 私が興味深かったのは、童話や民話、物語、小説の一場面が描かれていると
ころです。それらを上げてみますと「トム・ソーヤーの冒険」「あかずきん」
「欲張り犬」「裸の王様」「ピノキオ」「おだんごぱん」「長靴をはいた猫」
「おおきなかぶ」「ドン・キホーテ」「ブレーメンの音楽隊」「いばら姫」
「ハーメルンの笛吹き」
等です。それぞれの主人公がさりげなく、ちょっと注
意すればわかりやすく、でも周りの風景のじゃまにならないように描かれてい
て、1つ1つを見つけた時はとでも感動しました。
 この後、『旅の絵本』は氈E・。とつながっています。氓ヘイタリア編で
す。ここでは、イタリアの地方の村々に広がる田園風景や、ローマ、フィレン
ツェ、ベネツィアのような都市が背景になっているようです。この中に、まず
名画がいろいろはめられていて、それから聖書に関係ある場面が出てきます。
はじめにアダムとイブが楽園から追われている様子(おそらくミケランジェロ
のミスティーナ礼拝堂の天井画の中の楽園追放の絵)があります。そして、マ
リアの受胎告知から始まって、キリストの誕生から受難まで一生涯におこった
代表的な出来事が、ページをめくるたびにはじっこの方に出てきます。後は名
作や童話があり、私の見つけたところでは「3匹の子ぶた」「禁じられた遊
び」「みにくいあひるの子」「うさぎとかめ」「ピノキオ」「ラプンツェル」
「シンデレラ」
等です。
 はイギリス編です。やはりイギリスの風景の中に様々なものが織りこまれ
ています。みんなで見つけだしたものを上げておきます。「ピーターパン」
「ニュートン」「ジャックと豆の木」「不思議な国のアリス」「くまのプーさ
ん」「キャベツぼうや」ケイト・グリューナウェイの「マザー・グース」
がい
くつも。「シャーロック・ホームズとワトソン」シェイクスピアの「ベニスの
商人」「ハムレット」「ロミオとジュリエット」
ケネス・グレアムの「楽しい
川辺」、「メアリー・ポピンズ」「ドリトル先生」
それに「ウィリアム・テ
ル」
「ネッシー」等です。
 。はアメリカ編です。ここで見つけたものは「ちいさいおうち」「トム・
ソーヤーの冒険」「アンガスとあひる」「花のすきな牛」「エルマーとりゅ
う」「100万匹のねこ」「スヌーピー」「私とあそんで」「もりのなか」
「かいじゅうたとのいるところ」「ウェストサイド物語」「チャップリン」
「スーパーマン」「かもさんおとおり」「若草物語」「しろいうさぎとくろい
うさぎ」「ターシャ・チューダー」
等です。
 以上旅の絵本だけでも、2時間でおさまりきれるものではありませんでし
た。それぞれのすべての場面を見つけだすのは至難の業で、隠されている何か
を見つけ出すのは、これからの楽しみでもあります。わたしたちが年を重ねる
につれ、楽しめる絵本です。また。登場してきた物語、童話など改めて読みた
くなりました。
 来週は今回の続きとして、安野氏の作品の中から「私のお気に入り」を持ち
寄っておしゃべりする予定です。


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みて見て!読んでみて!みどりの絵本の会

三輪ゆうこ

 今月は市川里美の本を読みました。
 市川里美の本を図書館で捜したら、あるある「こんなに沢山?」と驚いてい
てしまいました。残念なのは、その半分位が書庫にあったということ。
 1977年『あなたもいますよ』でデビューして以来、自作の作品と他の作家の
文にさし絵を描いたものを合わせると30冊以上の絵本が出版されています。
当然今回は皆が持ち寄った本もいつもの倍以上になってしまいました。
 少女ノラと羊のベンジーが登場する『ぼくのせなかにのせてってあげる』
『たからさがし』を読み聞かせしましたが、このノラが主人公の名づけて“ノ
ラシリーズ”は子供と動物が可愛らしく、木や草花や自然の風景が美しく描か
れています。皆すっかり気に入ってしまいました。
 初期の頃の作品『子どものための詩集』も大好評でした。エレイン・モスと
シンシア・ミッチェルが選んだ外国の有名な詩人達の詩に、矢川澄子がひびき
の良い訳をつけ、それに市川里美が繊細な美しい絵を描いています。
 30年近くパリに住んでいる作者の、パリの風景を描いたエッセイ絵本も、決
して子供向きではないけれど、とても洒落たステキな本です。
 日本だけではなく、海外でも数々の賞を受けて評価の高い市川里美の絵本
が、なぜあまり読まれていないのか、私達は不思議に思いました。偕成社から
出版されている本では小学校中学年から一般向きとなっていますが、実際に絵
本を読んだり読み聞かせしてもらうのはもっと低年齢の子供です。対象年齢が
少し高いのでしょうか。ちょっともったいない気がします。お母さん達も自分
が好きなら小さな子供にもどんどん読んであげればよいという結論になりまし
た。

市川里美の本(作者名のないものは文も絵も)
『あなたもいますよ』矢川澄子文 冨山房
『みんなともだち』矢川澄子文 冨山房
『なにしてあそぶ』冨山房
『いっしょにあそぶ?』波瀬満子文 冨山房
『あさなゆうなにーこどものための詩集1』エレイン・モス選 矢川澄子訳 
冨山房
『いちばんぼしみつけたーこどものための詩集2』シンシア・ミッチェル選 
矢川澄子文 冨山房
『はしってアレン』ブラ文 舟崎靖子訳 偕成社
『おどって!ターニャ』ガウチ文 竹下文子訳 偕成社
『四季の子どもたち』偕成社
『天使が空からおりてきた』偕成社
『パリの子ども達』偕成社
『パリの恋人達』偕成社
『春のうたがきこえる』偕成社
『花の香り』偕成社
『愛された人形達』偕成社
『おだんごスープ』角野栄子文 偕成社
『リボンちゃんのリボン』偕成社
ノラシリーズ
『古いお城のおともだち』偕成社
『お星さまのいるところ』偕成社
『ベンジーのおくりもの』偕成社
『ドクタージョンの動物園』偕成社
『バラがさいた』偕成社
『ぼくのせなかにのせてってあげる』堀内紅子訳 徳間書店
『たからさがし』徳間書店
その他
『ジョゼットとニコラ』1〜6 矢川澄子訳 冨山房
『ロージーの庭』リブロポート
『ロージーの冬物語』リブロポート
等多数ありますが、品切れ・絶版の本もかなりあります。

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みどりの絵本の会 12月

三上由佳理

 11月から参加の三上です。よろしくお願いします。
 12月はターシャ・チューダーを取り上げました。興味深い作品が集まり、
アッという間の2時間でした。

 
三輪さん紹介の本

『すばらしい季節』
末盛千枝子訳 すえもりブックス
 おはなしがシンプルで、女の子のかわいらしい表情、しぐさが各ページにあ
ふれています。
『タシャ・チューダーのマザーグース』山田詩子訳 フェリシモ出版
 描かれているイラストは楽しく、山田詩子さんの翻訳はリズミカルでテンポ
がよく、マザーグースを丸ごと味わえます。


玉井さん紹介の本

『クリスマスのまえのばん』
(1980年発行)クレメント・ムア詩 中村妙
子訳 偕成社
 タシャのサンタクロースのイメージは、この詩からきており、3回にわたっ
て挿し絵を手がけたそうです。この版は2回目のもので、サンタが魔法を使っ
たりして、茶目っ気たっぷりに描かれています。
『輝きの季節ーターシャ・チューダーと子どもたちの一年ー』食野雅子訳 メ
ディアファクトリー
 ターシャの家の年中行事が美しい飾り罫で囲まれた水彩画で描かれていま
す。みているだけで楽しくなります。
『コーギービルのむらまつり』食野雅子訳 メディアファクトリー
 主人公のコーギ犬が、お祭りのヤギレースで優勝を狙うという楽しい物語絵
本です。


野村さん紹介の本

『クリスマスのまえのばん』
(2000年発行)クレメント・ムア詩 中村妙
子訳 偕成社
前述の同じ詩に3回目のさし絵をつけた最新版です。サンタは精霊のように
描かれていて、全体的に色彩豊かで幻想的な大人っぽい雰囲気がただよってい
ます。
『A TIME TO KEEP』
 前述の『輝きの季節』の原書版です。青いリボンのしおりがついていて、想
定が布張りで、表紙の大事にリスや小鳥がとまっていて、日本語版とは違うお
もむきが感じられました。


 三上紹介の本

『クリスマス』
ポップアップブック 偕成社
 細かい細工がほどこされたすばらしい作品です。内容は、クリスマスの祝い
方や意味、生誕の場面を紹介するものです。2場面目はアドベントカレンダー
になっており、1日1日めくるとかわいい絵がでてきます。
『The Lord Is My Shepherd-THE-THARD PSALM』
 旧約聖書の詩編23番「主は私の牧者です」という非常に有名な祈りの詩に
ターシャが絵をつけたものです。詩の言葉1つ1つに彼女の信仰心と絵心に満
ちたイラストがつけられ、祈りの世界へとひきこまれます。この詩は日本の文
学にも多く取り入れられ、堀辰雄の『風立ちぬ』等が知られています。

以上の他、写真集や長女ベサニーによる伝記も紹介され、作品の一部と合わせ
てじっくりと改めて味わうことができました。
 4人の子どもを育て、ガーデニングにいそしみ、動物の世話をし、絵を描き
…。生活に関わるすべての事を楽しんでいたという彼女は、便利な環境にかこ
まれた専業主婦生活を送っている私にとって、夢のような存在です。自分にも
何かできるかもしれないと希望が与えられてのでした。
来年は日本の作家を中心に取り上げる予定です。まず200年1月は市川里美
さんです。多くの方の参加をお待ちしています。

では

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みどりの絵本の会・十月三輪ゆうこ


玉井さんの紹介した本
◎『シェイクスピアとグローブ座』
文と絵 アリキ 訳 小田島雄志 <すえもりブックス>
グローブ座の再建の経緯が分かる。絵本というにはすごい量の文。文も絵も訳
も力が入っています。
◎『リリィおばあさんのなげキッス!』
ナンシー・ホワイト・カールストローク作 すずきひさこ訳、堀川理万子絵
 <偕成社>

三輪の紹介した本
◎『かずあそび ウラパン・オコサ』
谷川晃一 <童心社>
ウラパンが1、オコサが2で、絵本で説く2進法。
◎『ともだちや』
内田麟太郎作 降矢なな絵 <偕成社>
1時間百円で友達になってあげる商売を思いついたキツネは…
◎『となりのせきのますだくん』シリーズ
武田美穂作・絵 <ポプラ社>

野村さんが紹介した本
◎『るんぷんぷん』
ハンス・フィッシャー作・絵 さとうわきこ訳 <架空社>
フィッシャーの作品をよりすぐり、色々な絵を組み合わせて楽しい絵本にして
ある。
◎『ひとつアフリカにのぼるたいよう』
ウェンディ・ハートマン文 ニコラス・マリッツ絵 さくまゆみこ訳 <文化
出版局>
 南アフリカ共和国の自然と生き物を使って数を数えている。
◎『だいすきよ ブルーカンガルー』
エマ・チチャスター・クラーク作 まつかわゆみこ訳 <評論社>

 今回は『シェイクスピア〜』と『ますだくん』を除いた絵本を全部読みきか
せをしました。読んでもらうと単純な“数”の本もおもしろく感じ、ナンセン
スな本はよりナンセンスで笑ってしまうし、悲しい話はより深く悲しくなって
しまう。自分でページをめくって読むのとは印象がかなり違います。子供には
やはり絵本は読みきかせをした方が絶対いいとあらためて実感しました。

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みどりの絵本の会9月

 玉井 万里

 毎月それぞれが、ここ数年に出た比較的新しい絵本の中から好きなもの、
良いと思うものを紹介しあっています。

★三輪さんの紹介本
○「くろいマントのおじさん」
金森宰司作 福音館書店 1999/2000
 月刊「こどものとも」版とハードカバー版を比べて読んでみました。ハード
カバーの方が大型になって絵に迫力がある。人の形などがユニークでおもしろ
く、次回作が楽しみ。

○「きんいろのとき」
アルビン・トレッセル文 ロジャー・デュボアザン絵 
えくにかおり訳 ほるぷ出版 1999
 豊かな秋の物語。全体の基調になっている黄色の色使いがとてもすてき。

○「しりたがりのちいさな魚のお話」
エルサ・ベスコフ作・絵 石井登志子訳 徳間書店 1933/2000
 絵本としては、文章が長いがベスコフの絵が楽しい。

★野村さんの紹介本
○「ぼく、おかあさんのこと…」
酒井駒子作 文溪堂 2000
 子どもの気持ちがよくでている。絵もお話に合っている。

○「ヨッケリなしをとっといで(スイスのわらべうた)」
フェリクス・ホフマン おかしのぶ訳 架空社 1963/2000
 繰り返しと積み重ねの楽しいわらべうたの絵本。ホフマンの絵も楽しめる。
 
○「ぼくとオーケストラ」
アンドレア・ホイヤー文・絵 宮崎峠子訳 カワイ出版 1999/2000
 オーケストラのことがわかりやすく描かれている。

★玉井の紹介本
○「おおきなのはら」
ジタン・ラングスタッフ文 フョードル・ロジャンコフスキー絵 さくまゆみ
こ訳 光村教育図書 1975/2000
 動物や草花がおさえた色調で描かれていてほっと出きる絵本。

 今月はベスコフの古典絵本をはじめなつかしい絵本と、最近の絵本の両方が
紹介されました。1冊1冊内容・画風ともに違っていますが、それぞれに楽し
めました。1冊の絵本を通して話ができることはとてもすてきなことです。こ
れからもいろいろな絵本に出会えるのを楽しみにしています。

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7月みて見て読んでみて!
 みどりの絵本の会
 三輪 ゆうこ

 最近1〜2年に出版された絵本の中から

玉井さんが選んだ本
『はがぬけたら どうするの?ーせかいのこどもたちのはなし』   
<フレーベル館>
 セルビー・ビーラー文
 ブライアン・カラス絵
 こだまともこ訳
『ねぎぼうずのあさたろう』その1・その2
<福音館書店>
 飯野和好作

三輪が選んだ本
『色の女王』               
<小学館>
 ユッタ・バウワー作
 橋本香折訳
『コッテンのお客様』
<フレーベル館>
 レーナ・アンディション作・絵
 長下日々訳

 それぞれがみんな違う国から出版された本ということもあり、本の大きさも、
話の展開も、色彩も4冊とも大きく違っていたのがおもしろかった。今までこ
んなに共通点のない本を読み比べたことがなかったので、とりとめのない感想
はあるのだが、結論は出しようがない。テーマがなくて漫然と本を選ぶという
のも案外大変だった。数は沢山あっても、心に残る本は少ないし、最近の絵本
は現在定番になっている名作絵本(たとえば『かばくん』『どろんこハリー』
ブルーナの『うさこちゃん』シリーズや『ぐりとぐら』など)よりも印象が
薄い感じだ。エリック・カールの本やワンダ・ガアグの本のように誰とも違う
強烈な個性を持った上に、子どもから圧倒的な支持を受けてしまう本が少ない
気がする。 最近1950年代の『おさるのジョージ』の本が沢山出版され
たり、子どもにはおなじみの『バーバパパ』『メイシーちゃん』のアニメ
のビデオテープが売れたりするのは、何も新しいキャラクターに頼らなくても、
おもしろくて楽しくて作者の考えがちゃんと伝えられているものであれば、い
つでもファンがついて購入する人がいるのだということに販売する側が気がつ
いたのだろう。
 そうなると新しい絵本はちょっと分が悪い。才能を持った可能性を秘めた現
代の絵本作家にもっと作品を発表する機会が与えられなければ、作者の力も伸
びていかないし、作品の質も良くなっていかない。なかなかたいへんな作業で
はあるが、ここはがんばって、良い本(楽しめて、感動を与えてくれる絵本と
いう意味)を捜していきましょう。

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六月みてみて読んでみて!
      みどりの絵本の会
               玉井 万里

 今月から各自持ち寄った絵本を紹介しあうことになりました。5月にトムズボックスであっ
た土橋さんの展覧会を見てきた三輪さんは、その時の様子と絵本を3冊紹介してくれました。
絵と一緒に作者手作りの人形もおいてあり、楽しかったそうです。

『めらゃくらゃるすばん』(こどものとも年少版268号)土橋とし子作 福音館書店
『ものものずかん』土橋とし子作 福音館書店
『おとうさんの玉手箱』富安陽子文 土橋とし子作 ほるぷ出版
 土橋さんの絵本は色・形がとてもユニークです。

 野村さんはスウェーデン旅行のはなしと、絵本を1冊紹介してくれました。
『ウソつきなチルル姫』松井つかさ 星色スプーン 郁朋社
 コラージュの手法を挽い、色がされいな絵本です。
 
 玉井の紹介本は下記の3冊です。
『ロンポポーオオカミと3人の娘』エド・ヤング再話・絵 藤本朝巳訳 古今社
(1990年コールデコット賞受賞)
 不思議な雰囲気が伝わってくる昔ばなし絵本。色使いがきれい。
『オールドブルー 世界に1羽の母鳥』
メアリー・ティラー作 百々佑利子訳 さえら書房
 世界に1羽の母鳥オールドブルーの一生と、ブラックロビンを絶滅から救う科学絵本。絵
がとてもきれい。
『おはなしこねずみ ロミュアルド』
アンヌ・ジョナス作 へランソワ・タロザ絵 なかいたまこ訳 フレーベル館
 図書館のねずみ穴で暮らすロミュアルドと猫のチべ一ルの物語。絵に迫力があり、おは
なしも楽しい。
 文章量の多い絵本はどうしても敬遠されがちですが、読み込むとおもしろい本があるの
で、親子で楽しんでほしいと思います。出久根達郎氏のエッセイ『風がページをめくると』
(リブリオ出版)「猫になる」の章でこんなことばに出会いました。「絵本の世界は、いつ
ごろからこんなにもバラエティに富むようになったのだろう。絵もすばらしいし、物語もい
い。大人が読んで楽しいのだから、子どもはもっと胸がはずむだろう」。今回紹介された
『めらゃくちゃるすばん』のことが書かれています。



五月みて見て読んでみて!
〜みどりの絵本の会より
              藤井田 厚子
今月は、ビアトリクス・ボターの作品であるピーターラビット・シリーズから、「2ひき
のわるいねずみのおはなし」「のねずみチュウチュウおくさんのおはなし」「まちねず
みジョニーのおはなし」
の3冊です。
 「2ひきのわるいねずみのおはなし」は、昔あるところにたいへんきれいなドールハウス
がありました。というお話のからです。それぞれの部屋でくいしんぼうねずみ達2匹が好奇
心を満たしていくわけですが、人形の部屋のサイズとねすみ達のサイズがぴったりだった
りして、読んでいくうちにいつのまにか自分も人形の部屋でなまりのナイフやフォークをう
まく使って食べようとする閑係者の気持ちになっています。そこで食べ物を見つけて大喜び
してはしゃいでいるネズミ達2匹は…。ところが色々と確かめているうちにお皿のうえのハ
ムやチーズはこちこちで、また見つけたお魚はお皿にきっちりついています。さあ、みんな
にせものだと知ってからのねずみ達はどうしたでしょうか。私が好きなのはこれからなので
す。ネズミ達!お母さんからものをこわしてはいけませんよ、大切に使いましょうね。と言っ
て育てられてきた私たちは、これからのお話の展開がネズミ達万歳!と応援しながら読むこ
とになるのです。
「2ひきのわるいねずみのおはなし」ではありますが、最後にはよいねずみになって終わりま
す。あとの2冊もいわば毒けのあるお話がここかしこにみうけられますがそれは規則正しい毎
日の生活を好むイギリス人や私たちにとっては、味と深みの部分になっています。
「のねずみチュウチュウおくさんのおはなし」は、かえるや虫達がきれい好きのおくきんの部
屋にかってにおじゃまするお話です。
「まちねずみジョニーのおはなし」は、イソップの「とかいのねずみといなかのねずみjをビア
トリクス・ポターがアレンジしたらこうなったと言うものでしょう。いすれもおすすめです。



二月みて見て読んでみて!
みどりの絵本の会より
  ビアトリクス・ポター/ピーター・ラビット
                        藤井田 厚子
 今月は、ビアトリクス・ポターの作品であるピー夕一ラビット・シリーズから、「ピ一夕ー
ラビットのおはなし」、「ベンジャミンバニーのおはなし」、「フロプシーのこどもたち」を、
読みました。
 ビクトリア調時代のイギリスで今から134年前に裕福な家庭の娘として生たれたビアトリ
クスは、他の名家の少女と同じように、学校には行かず、家にこもり家庭教師について勉強し
ていました。内気な正確だったので人と話をするよりも、本を読んだり動物を観察することの
喜びに夢中だったようです。鍛えられた観察眼と細かい絵の中の表現カ、そして一見シンプル
そうでいて俗に流れないたいへん格調高い文章は、若い頃にシェークスピアの全戯曲を暗唱し、
創作を初めてからも絶えずす「欽定訳聖書」とシェークスピアを読み直し、文体を洗練させた
事にもあります。絵と同様に言葉にも相当こだわりました。
 絵本の創作に専心していたのは、77年の生涯のうち13年ほどにすぎません。その他の時期
は自然科学の研究に熱中したり、農家を買い取って羊の飼育に精をだしたりと、他分野の活動
に興味を示し、農業経営者としての仕事に打ち込みながら晩年を過ごしました。
 現実的な精神とものごとを細かに詳しく見る目の持ち主だった彼女は抽象的な思考をあまり
好みませんでした。英語の美しさを愛した人でしたから、子どもは、その美しさを十分に楽し
めるように育てるべきだ。ということを彼女は確信していました。
 「ピーターラビットのおはなし」は、かつてのドイツ語の家庭教師であり生涯を通じ、良き
友人だったアニーカーター、結婚してムーア婦人の5歳の男の子に、自分の考えたお話を綴っ
た、挿し絵入りの手紙を送り続けていて、それが子どもたちにとても人気があったことから1
冊の本にまとめてみたいと思うようになりました。出版に関して色々とありましたが彼女はそ
れを自費出版することで私家版の「ピーターラビットのおはなし」が世に出ることになりまし
た。大変評判がよくあっと言う間に増刷することになりウォーン社から色付きでそれから一連
のお話が次々と出版されることになりました。うさぎのピーターは、大変ないたずらっ子で他
の三人の姉妹とはちがい冒険家です。マクレガーさんとこのはたけにだけはいっちゃいけない。
おとうさんは、あそこでじこにあって、にくのパイにされちゃっているんです。
と、お母さんに言われてもいちもくさんに駆けつけます。そして色々な事が…。この小さな本
の中には生きるカが一杯つまっています。100年以上たっていてこのお話が新鮮なのは、ビ
アトリクスの半端ではない生き方によるものです。
精々ピーターの歌をうたい、キャラクターグッズを揃えようか。



 一月 みて見て読んでみて!
    みどりの絵本の会
                  三輪ゆうこ
宮沢賢治を絵本で読む@
 「雪わたり」「水仙月の四日」

 宮沢貿治の話が絵本になると、画家の個性がはっきり現れて、同じ物語なのに絵が違うだけで印
象がそれぞれ全く異なるのに驚かされる。今回は「雪わたり」と「水仙月の四日」を見読み比べを
した。この二作は共に賢治の生前に世に発表されている。
 「雪わたり」は八冊もあった。よく知られているのは城内誠一の絵によるものだが、他の画家の
ものも昔力作揃い。残念なのは、字数が多すぎるため、レイアウトの点で絵との兼合いが難しいこ
と。文を削る訳にはいかず、絵も本来の味を損ないたくない。そのため編集者のお手並み拝見とい
った比べ方もすることになった。主人公の子どもを一つとってもその姿と服装が可愛く描かれたも
の、前衛的なもの、昔風もあれば和風、無国籍風と色々なタイプが登場する。雪の風景も狐の踊り
も、本当にそれぞれ全く別の世界を展開していてとてもおもしろい。色彩も青が基調のもの、茶系
の落ちついたもの、赤がポイントに使われているものとさまざま。ミキハウスの本はモノクロの画
面に字が白ヌキではなく青というのが凝っている。絵の手法も水彩、油彩、木版、エッチングと異
なっているから、印象が違う。今回大雑把に言って、ちょっと現代的過ぎる感はあるが、小林敏也
のものが一番分かりやすいという感想だった。が、本当のところどれも素晴らしくとても評価なん
かできない。
「水仙月の四日」と本の大きさが皆違い、それだけ雰囲気も全然違っている。私個人としては伊勢
英子の幻想的な絵が物語のイメージと合っていて一番気に入っているが、恐ろしいよこの絵は。
赤羽末吉の絵は雪の美しさと怖さを強烈に感じさせて見事だし、猛吹雪の中の子どもの生命力を神
秘的に描く黒井健の絵もうっとりさせる。今回は二つの話だけだったが、見応えがあった。圧倒的
な文の素晴らしさに加えて、感動的な絵の競演、読む者の心をぐいぐい引き付けてこれらの絵本た
ちに、しばし時間を忘れてしまった。

作品リスト
「雪わたり」 堀内誠一   福音館書店 1969
「雪わたり」 鈴木まもる  講談社   1986
「雪わたり」 いもとようこ 白水社   1986  
「雪わたり」 小林敏也   パロル社  1989
「雪渡り」  たかしたかこ 偕成社   1990
「雪渡り」  佐藤国男   福武書店  1990
「雪わたり」 方緒良    ミキハウス 1991

「水仙月の四日」 赤羽末吉 福音館書店 1969
「水仙月の四日」 伊勢英子 偕成社   1995
「水仙月の四日」 赤羽末吉 創風社   1997
「水仙月の四日」 黒井鍵  ミキハウス 1999


十二月 みて見て読んでみて!

 みどりの絵本の会 三輪ゆう子


働く「くまさん」シリーズ


 「くまさん」は原題ではTeddy Bearで、見た目に可愛らしく仕草もほほえましく、典型的な
子ども向きの絵本の主人公です。このシリーズはどれも落ち着いた色彩の絵と子どもにわかりやす
い話でできていて、全体が安定している上、訳も淡々としていますがとても丁寧です。老舗の味と
でも言いましょうか、質の高い安定した作品です。
 本のサイズも子どもが扱いやすい大きさで、つい大人も気軽に読み聞かせてしまうのです。初め
の3冊「せきたんや」「パンや」「ゆうぴんや」のくまさんは、早起きで強い職業意識を持ち、仕
事きっちり黙々と働きます。石炭運び用のすべりどめつきベストや、コック帽、クリスマスには柊
を飾る郵便帽など小道具をちゃんとくまさんが身につけているのが楽しい。「たったひとりですん
でいました」とあるくまさんのアフタータイムの静かな生活もさりげなく描かれています。
 それで思ったのですが、これは小さなクマの姿をしているけれど、主人公は本当は人間なのです。
それも独身の中年男性。このシリーズをじっくり見てみると分かります。石炭屋は働き盛り、パン
屋・郵便屋と段々年齢が上がってきて、植木屋では自宅周辺でマイベースで仕事をする年配者、牧
場になるともう引退した老人で、日常生活をマフェットさんが手伝っています。
 細かく見ていくと、各巻の階段や部屋のシーンでくまさんは天涯孤独というのではなくて家族や
友人がいるということが分かるし、クリスマスの晩にはカードやプレゼントが飾られているのでな
んだかホッとします。文章ではなんの説明もないのですが、くまさんの趣味が釣りだというのが分
かるし、やっぱりイギリスはガーデニングの本場だと納得できるし、老人の気難しさも表情などで
伝わってきて苦笑してしまいます。くまさんの過去の人生をちょっと知りたくなったりします。
 これは一人の男の半生を描く大人向けの絵本なのです。そう思って読むと、このシリーズはなか
なか奥の深い作品です。まっとうな生き方の厳しさと淋しさを私たちに教えてくれるだけでなくて、
こういうのを「悔いのない人生」というのだろうかと思わせ、感動を与えてくれます。
 気がつかなければただ読み過ごしてしまうこのシリーズ、一度親子でじっくりと味わってみてく
ださい。
 作者が3作目まではフイービーとセルビですが、4作目からはフイービーとジョーンに、5作目は
フイービーの姓が変わっています。この人達は夫婦あるいは親子兄弟なのでしょうか。作り手が変
わっても質が決して落ちない、変わらない味、こういうところも老舗的です。


 

作品リスト
「せきたんやのくまさん」
フイービーとセルビ・ウォージントン/石井桃子訳/福音館書店/1987

「パンやのくまさん」
フイービーとセルビ・ウォージントン/まさきるりこ訳/福音館書店
 
「ゆうぴんやのくまさん」
フイービーとセルび・ウォージントン/まさきるりこ訳/福音館書店

 rうえきやのくまさん」
フイービーとジョーン・ウォージントン/まさきるりこ訳/福音館書店

 「ぼくじょうのくまさん」
フイービー・ピンダーとジョーン・ウォージントン
              まさきるりこ訳/童話館出版/1997


十一月 みて見て読んで見て!
  「14ひき」シリーズを読む
                  玉井万里

 今月は子どもたちに人気の「14ひき」シリーズを読んでみました。
1983年の第1作「14ひきのひっこし」に始まり、1997年の「かぼちゃ」まで、
全部で10冊の絵本が出ています。
 作者のいわむらかずおさんが、栃木県益子町にひっこしたのは1975年。
野ねずみの家族を主人公にした絵本の構想は、その前からあったようですが
益子へのひっこしから8年たって「ひっこし」は生まれています。
「八年間の益子での子どもたちの暮らしと、
自分の子どもの頃の暮らしが重なり合って、
14匹のキャラクターと絵本の舞台はでき上がっていったのである」と作者は書いています。
 今年の夏にあった講演会の中でも、絵本の中の小動物たちは、
すべてを"益子の雑木林"の中から生まれており、
14ひきの野ねずみは「ひめねずみ」がモデルになっていると語られています。

10冊を並べて読んでみると次のような感想が出ました。
*絵がうまく、ていねいに描かれている。(デッサンカがある)
*自然の変化も生き生きと描かれている。(自然の色とは違う色が使われている)
*物語性はあまり感じられない。(読み手の側にゆだねられている)
*三世代の家族が助け合って暮らしている。
(テレビ「一つ屋根の下」の世界に似ている<中学生の感想>)
*カバーと表紙の絵に違いがある。
*役割が固定化している.(たとえば「さっちゃんは長女で下の子のめんどうをよくみているなど)

 このシリーズは、絵のすみずみまで見ることで、
いろいろな発見があり14ひきのだれを中心に見るかによって、
14通りの話ができるという感想もありました。


14ひきシリーズ作品リスト
「14ひきのひっこし」 1983年 童心社
「14ひきのあさごはん」1983年 童心社
「14ひきのやまいも」 1984年 童心社
「14ひきのさむいふゆ」1983年 童心社
「14ひきのぴくにっく」1986年 童心社
「14ひきのおつきみ」 1988年 童心社
「14ひきのせんたく」 1990年 童心社
「14ひきのあきまつり」1992年 童心社
「14ひきのこもりうた」1994年 童心社
「14ひきのかぼちゃ」 1997年 童心社
他 「14ひきのアトリエから」1991年 童心社


十月 みて見て読んでみて
      「だるまちゃん」シリ一ズ(かこさとし)を読んで
                三輪ゆうこ
 特に話がおもしろいわけではなく、絵もじょうずではない。
それなのに「だるまちゃん」シリーズが子どもに人気があるのはなぜだろう。
 一九六七年に出た一作目の「だるまちゃんとてんぐちゃん」は何度も版を重ねたロングセラー。
図書館や幼稚園ではもちろん子どもの集まる所には必ずある。
小さい子もまたこの本が好き。読んであげるととても喜ぶ。
 作者の加古里子は、子どもの目の高さと心の動きをよく知っている。
彼は自分でだるまちゃんになって、てんぐちゃんの持っているものを欲しがり、
身の回りのものを工夫してそれらしきものを作り出す。
一方でお父さんのだるまどんになって、子どものためにあれこれ考えて手助けしてくれる。
でもそれが結構的外れで大まじめなギャクになってしまう。
うちわ→ぼうし→はきもの(ゲタ)→長い鼻と繰り返しが四回、
絵づくしの中にヒントを盛り込み、だるまちゃんの思いつきで完成。
欲しがり屋で知りたがり屋の子どもたちはだるまちゃんの興味や発想に大喜び。
 二作目の「かみなりちゃん」も子どもの感覚をよく把えていて楽しませてくれる。
今度は絵づくしではなく、かみなりの町のプールや街の通りの絵の中
にさまざまな作者の工夫を見ることができる。工学博士である作者は
子どもに分かり易く科学的な絵を展開している。
 三作目の「うさぎちゃん」は丹下左勝と座頭市といった、
今ではレトロなおじさんキャラクターがアクセントになっている。
工作のページが多く、子どもに「作って」とせがまれる大人にとってはちょっと面倒な本なのだけど‥・。
 四作目「とらのこちゃん」は一九八四年になって出た。
色調も話の筋も現代的にポップな感じに仕上がっている。
友達と一緒に何かをする楽しさを教えてくれる。
 五作目の「だいこくちゃん」では、このシリーズの特徴であるぶっきらばうの語り口と
次々繰り出される正統派おやじギャグのパワーが少し落ちてきた。
もともと作者は、日本の子どもが日本のものや遊びを楽しむ日本らしい絵本を
作ろうという思いでこのシリーズを作っていた。その意味では、「だいこくちゃん」で
子どもたちは楽しく日本的な世界に入ることができる。絵も上手になっている。
でも、この本だけはハードカバーになっていない。
 あらためて五冊を並べて読んでみて気付いたこと、
「だるまちゃん」シリーズは他のどの本とも逢う絵本だ。
そして、いつどこで読んでも全然疲れない本なのです。

 1967年「だるまちゃんとてんぐちゃん」
       かこさとし(こどものとも 福音館書店)
  68年「だるまちゃんとかみなりちゃん」
       かこさとし(こどものとも 福音館書店)
  72年「だるまちゃんとうさぎちゃん」
       かこさとし(こどものとも 福音館書店)
  84年「だるまちゃんととらのこちゃん」
       かこさとし(こどものとも 福音館書店)
  91年「だるのちゃんとだいこくちゃん」
       かこさとし(こどものとも年中版 福音館書店)


七月 みて見て読んでみて!

                藤井田 厚子
 今年の梅雨にウキウキ気分でいられたのも一つには、
片山 健さんの絵本があったからでしょうか.
水彩絵の具で描く梅雨時の絵はあの半透明な色の重なりでピッタリきます.
複雑な心情や空気は、大胆な平面構成や細部へのこだわりでみごとに表現されていて、
それに自然でとても暖かい人間性をかんじます.
11歳の息子も5年生の国語の教科書で勉強しました.2−3才からおせわになっています.
私は、子育てで困っているとき悩んでいるときに、
本屋さんに行って健さんの本を開けてみました。
すると肩のカがぬけてきてほっとしたりほっペたの力もゆるんできたのでした.
子育ては、断然おおらかでなくちゃ、と思うのです.
今回気がついたことに、絵本のなかでコッコさんは実にのぴのぴと遊んでいるのです.
細かなおもちゃをいっぱいだして、ぬいぐるみはあっちこっち、
きれをどこかでみつけてきたのかテントをはっていておままごと遊びをしている.
お兄ちゃんは、よこで電車ごっこ.それで、お父さんは新聞を読んでいる.
そのような中でよく読んでいられるとおもう.すざましい日常生活の風景です.
母親なら早くかたずけなさい.とキーキーになるところなのです.
父親の目の高さはいい、子供がのびのびと自然体になれるんだ.
世のお父さん子育てもいいですよ.そう言っているようです.
今月は、「コッコさんシリーズ」(片山 健 作・絵)です.

 *    おやすみなさいコッコさん
 *1983 だ−れもいないだれもいない
 *1984 コッコさんのともだち
 *1986 コッコさん おはよう
 *1988 コッコさんのおみせ
 *1991 コッコさんとあめふり
 *1988 コッコさんのかかし
  (「かかし」を改訂)
 いずれも福音館書店

 その他の作品
*タンゲくん         福音館
*ぱたばたぽん         〃
*どんどんどんどん      文研出版
*大きい川小さい川      ぽるぷ
*おばあさんの青い空     偕成社
*えんそく          架空社
 などです.

 数多くの作品の中から片山 健さんの作・絵の作品だけを紹介いたしました.
この頃の子供達は、忙しくて疲れている.と、よく言わます.
好きでもないものをやらされると、つかれた.
算数や社会を家で勉強すると、面白いけれどもつかれるんだ.と、いいます.
朝のおきがけに(コッコさんおはよう)を、楽しみました.
久しぶりに軽やかでのびのびとした表情をみました.
こんな時間の使い方もいいな.幸せな瞬間です.


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