児童文学を勝手に読む会 2001年度版
2001・12 | クリスマスキャロル/チャールズ・ディケンズ |
2001・11 | だれも知らない小さな国/佐藤さとる |
2001・10 | 砂の妖精/イーディス・ネズビット |
2001・9 | 床下の小人たち/メアリー・ノートン |
2001・8 |
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2001・7 | 木かげの家の小人たち/いぬいとみこ |
2001・6 | クラバート/オトフリート・プロイスラー |
2001・5 | 夜の鳥/ト−ルモー・ハウゲン |
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クリスマスキャロル/チャールズ・ディケンズ
早いものでもう年末です。初雪もちらつきクリスマスムード満点?みなさまはどんなクリス
マスでしたか?私は今回引越しにかきまわされ、あまり満喫出来なかったのが、残念。という
わけで、今回はクリスマスにちなんで、「クリスマスキャロル」。古典で、しかも王道ですね。
誰でも一度は読んだ事がある?もしくは耳にしたり、映画やドラマで見たりしているのではな
いでしょうか?児童文学なのか…?という疑問はあるのですが、絵本も出版されていることだ
し、やはり子供の時に一度読んでおかないと、大人になってから読み返した時の感動がないの
では。人生のうちに何度も読んで味わいが変化してくる本のうちの一つなのではないかと思い
ます。
お話は、頑固で意地悪で守銭奴のスクルージの前に、過去、現在、未来の「クリスマスの三
人の幽霊」があらわれて…。普段では気付きにくい、自分とはどういう人間なのか、というの
を外がわから見せられ、スクルージは自分がいかに無力な子供だった時期を忘れ、金もうけに
しか興味が無くなっていたかを思い知らされるわけですね。最初は血も涙も無い冷血漢だった
頑固じじいが改心して良い人になる、というお話なんですが。説教臭い題材にも関わらず、人
の心の機微をなんと絶妙に捕らえていることでしょうか。いつまでたってもディケンズのお話
が古くならないのはこの辺りに理由があるのではないでしょうか?物語りに登場するアイテム
がいかに古くなったとしても、人の心の動きはそうそう変わったりするものでは、無いんですね。
残念ながら今年はクリスマスを満喫出来なかった私ですが、再び読み返して、クリスマスっ
ていうのは何が楽しいのか再確認した気がします。なんといってもプレゼントを人にしてあげ
られる日。勿論自分が貰うのも嬉しいのですが、それよりも人に何かをしてあげられる日、と
いうのがクリスマスの醍醐味なのではないでしょうか?
苦労して時間をかけてつくった料理や飾り付け。普段は会えない家族が集まったりと、クリス
マスは「生活」を楽しむ事が最優先される日ではないかと私は思うのです。日本ではなんだか
恋人達の祭典と化していてむなしいですが、「クリスマス」が世界に浸透して、「クリスマス」
の誰かを幸せにしたいという気持ちが宗教に関わりなく広がって、みんなが楽しめる、という
のはとても素敵な事ではないかと思うのです。
さてこの「クリスマスキャロル」さすがに古典なだけあって、いろいろな出版社から出版さ
れています。全集から絵本まで。訳もそれぞれ赴きがあって面白い。私が読んだのは太平社か
ら出ているツヴェルガーが挿し絵をしているものです。挿し絵で選んだり、全集をあさってみ
たり、子供向けの抄訳も。さてこの機会にみなさんもお好きなものを選んで、読み返してみま
せんか?
今回話題になったのは、イギリスの「クリスマスプティング」はどういうものなのか、という
こと。羊羹のようなものなのでは?いやもっとプリンに近いのでは?と様々な意見が。私はイ
タリアのパネトーネのようなものを想像していたのですが…?どなたか御存知の方、是非教え
て下さいませ。それではまた来月。
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児童文学を勝手に読む会 2001・11・21
「だれも知らない小さな国/佐藤さとる」
さてプーの森の引越しが終わったと思ったら、自分が引越す事になってしまいました。近くな
んですが、やはり引越しの準備というのは大変です。皆様は如何お過ごしですか?寒くなった
ようなならないような。冬はどこへ行ってしまったのでしょうね。
さて今回は「だれも知らない小さな国」です。個人的に思い入れのあるお話だったので、心配
していたのですがちゃんとわくわく読めました。なにしろ「佐藤さとると村上勉の作品につい
て」という自由研究を小学生の時にしてしまっていたくらいでしたので、今読んで、つまらな
かったりしたら残念だな、と思っていたのです。村上勉の絵イコール佐藤さとるのお話、とい
う図式が自分の中で出来上がってしまっているので、他の挿し絵だと何か違う感じがぬぐい去
れないという部分も手伝って あまり新しい佐藤さとる作品には手をつけていないのですが。
このような結びつきは善し悪しで、難しいものですね。(リンドグレーンとヴィークランドも
そのような関係にあったようです。)本人たちもやりにくいところがあったのだろうと感じま
す。しかしそれだけそのお話と挿し絵の世界が独立して一人歩きしている、といったところで
しょうか。完成度が高くなくてはあり得ない事だと思い、羨ましくもあるものです。
さてお話は、物語りの語り手「せいたかさん」が子供の頃を思い出す事から始まります。子
供の時に自分だけの秘密の小山があり、そこで小さな小さな「こぼしさま」を見かけます。そ
の後戦争がおこり、引越しもし、子供だった「せいたかさん」は青年になります。やっと余裕
が出来たところで昔の事を思い出し、小山の持ち主に、今はお金もなくて買えないが、いつか
ゆずってくれないだろうかと話しを持ちかけます。そして「せいたかさん」は昔自分が見たあ
れは一体なんだったのか確かめたくて、調べはじめるのです。その頃から「せいたかさん」の
周りには小さな黒い影がうろつくようになるのですが・・・。
この「こぼしさま」「コロボックル」の描写がなんとも言えず可愛らしくて子供の時にどうに
かしてそんなものに実際に出会ってみたいものだと、夢をふくらませておりました。「ルルル
ルッ」という小さな話し声が聞こえないかと耳を澄ませたり。住んでいたのが山の中?だった
ため「小山」という場所もシンクロして、フキの葉を裏返してみずにはおれませんでした。
いぬいとみこの「木かげの下の小人たち」と同時期に書かれたということですが、日本を舞台
にして同じ小人を扱った題材のお話でもこんなに違うものだなあ、と考えさせられます。
しかしシリーズ化されていくと終わりのほうがつまらなくなってしまうのが、勿体ないかな。
「あかんぼ大将」もそういえばそうでした。佐藤さとるは短編のほうが私は好きかな。「子供
が一人でいられる秘密の場所」という題材が多いのも私を引き付ける理由の一つかもしれませ
ん。それから今回新たに発見したことは、佐藤さとるが建築科の出だということ。だから家を
つくる、という話が多いのか、と妙に納得。「大きな木がほしい」「ジュンとひみつのともだ
ち」とかそうですよね。実は私も建築科の出だったりしますが、その道に進んでしまったのも、
これらの本を読んでしまったせいかも??
さー来月は年末も押し迫り「クリスマス・キャロル」王道ですね。みなさまはどんなクリスマ
スを過ごされるのでしょう?私は家族の祭典と言った感じなのですが・・・そういえばこの頃
帰ってないなあ。
とにかくその頃には引越し作業も落ち着つかせて、心置きなくクリスマスモードに浸りたいも
のです。では。 にいくら
砂の妖精/イーディス・ネズビット
秋もまっただ中となりました。皆様いかがお過ごしですか?私は夏の疲れが今頃になっ
て出てきたらしく、初の電気針治療にせいを出しております。い、痛いよ!普通はそんな
に痛くないらしいんですがね。運動不足もたたっているので、帰りに公園一周のお散歩も
加えました。努力の日々であります。早くこの体調不良とおさらばしたいよ〜。
さてプーの森仮店舗第一弾!は「砂の妖精」。NHKでアニメにもなっていたので、(お
ねがい!サミアドン)御存じの方も多い筈?イギリスでは1902年に出版となっている
ので、百年は前のお話です。それなのでちょっと訳が古く感じたりするのはいたしかたな
いのでしょう。生活環境も今とは違いますし。私が読んだのは福音館書店発行、石井桃子
訳のものです。ミラーの挿し絵が美しい本です。しかし、サミアドってこんな形なの・・・?
とちょっとぎょっとしてしまうのは確かですが。
お話は、シリル、アンシア、ロバート、ジェインの兄弟姉妹と、一番末っ子の2歳のぼう
やが、砂利掘り場で、砂の妖精「サミアド」を見つけたことから始まります。かたつむり
のような目、こうもりのような耳、クモのようなおなかで手足は猿のよう、というこの奇
妙な生き物はお願いをかなえることが出来る不思議な妖精。みんなで一日一つのお願いを
叶えてもらう約束をするのですが、なぜか「正確にお願いをきいてもらえる」ことがなく、
いつもとんでもない結果を引き起こすはめに。
お願いとは良く良く考えてからすべきものだなあ、と考えさせられます。うっかりお願い
なんてしてしまうと困った事になること請け合い、のようですよ。このお話は三部作のよ
うで、「火の鳥と魔法のじゅうたん」「魔よけ物語り」が続きと思われます。今回は勉強
不足で読んでいないのです。ごめんなさい。
ネズビットの作品は良く、「子供のかきわけが素晴らしく、活き活きしている」という
ような形容をされているようですが、そうかな?ちょっと疑問に感じていたのですが、ネ
ズビット以前にそういった、個人としての子供が主人公の作品が少なかったということな
んでしょうね、と納得。それでも子供としての集団が活き活きと描かれていることは確か
みたいですね。ただ兄弟順序がいまいち・・・なぞだったのですが。さ、みなさんも急に
サミアドに出会っても困ったことにならないよう、たった一つのお願いを考えてみてはい
かがですか?
来月は「だれも知らない小さな国」。またまた日本の小人と遊びます。小さい頃大好きだっ
た本の一つです。楽しみ〜。その反面、今読んでも楽しいのかどうかちょっぴり不安でも
あります。
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児童文学を勝手に読む会 2001・9・19
床下の小人たち/メアリー・ノートン
なんだか突然寒くなってまいりました。もう秋ですね。やっと生命力がもどってまいりま
した。
世界的に悲惨なニュースが横行する昨今、私的にもばたばたしておりまして、早く落ち着
きたいと思う日々であります。みなさんは如何お過ごしでしょうか。
さて、今回の「床下の小人たち」。家の床下にひっそりと住み、生活用品を人間から「借
り」て暮らしている、ポッド、ホミリー夫婦と一人娘のアリエッティ。魔法を使えるわけ
ではない、彼等はただサイズが小さいだけで、人間とそう変わりありません。(ただこの
小人たちは人間は私たちのために存在する、と考えているようですが。)
安全ピンは鍵に、吸取紙は絨毯に、指ぬきはコップに、包帯はタオルに・・・と工夫して
暮らしに役立てています。そしてもちろん食料も、何から何まで「借り」て暮らしている
小人たちが恐れているのは、人間から「見られ」ること。そうなったらもう、引っ越すし
か生き延びる道は無いと信じる両親に、娘のアリエッティは「そんなことないと思うわ」
と反発するのですが・・・。
現在はどうやら絶版になってしまっているようですが、「野に出た小人たち」「川を下る
小人たち」「空を飛ぶ小人たち」「小人たちの新しい家」などの続編があります。どれも
密接に続いているお話なので、興味のある人は図書館を探してみてください。
私としては続編のほうに出てくる野生の小人?スピラーがお気に入りでした。もっとスピ
ラーの冒険物語りが聞きたい!と思っていたのに、最後のほうはあまり出てこなくて残念。
この物語りの面白さは、やはり小人が利用する道具の数々。器用に作り直したり、なるほ
どそうやって使うのか、と感心させられたり。既製品は無いわけですから、何もかも作ら
なくてはならないわけです。このお話を読んでいると、久しぶりに手作りがしたくなる・・・
そんな気にさせる作品です。
子供の時に読んでいたらもっとわくわくしただろうと残念ですね。
始めは人間のケイトという少女が小人のお話をしてもらう、という形で進められているの
ですが、シリーズを重ねるごとにそれがなくなってしまい、ちょっと疑問が残ったりしま
したが。以前「読む会」で読んだいぬいとみこの「木かげの森の小人たち」がいかにこの
本をお手本にしているかというのが良く分かってしまうので、こういう順番で読んで良かっ
たね、という声も。
さてこのメアリー・ノートン小人シリーズの他に、「魔法のベット南の島へ」「魔法のベッ
ト過去の国へ」という魔法ものも書いています。今は二つの話しがまとめられて岩波少年
文庫から「空とぶベットと魔法のほうき」という題名で出版されています。子供の頃読ん
でいて、すごく好きな本でした。だってベットで空をとぶんだよ?それだけでもう私は満
足してしまうのだけれど。安心の空中飛行。いいなあ。
次回「プーの森」引っ越し後第一弾は「砂の妖精」です。さてどうなることでしょう?
小人と妖精はいかにして違うのか?!乞う御期待。
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木かげの家の小人たち/いぬいとみこ
ますます猛暑ぶっちぎりの夏、皆様いかがですか??私はあまりの暑さにうんざり
し、突然夜中に髪をショートにするという奇行に。自分でショートにするのは初めて
なのですが、「えー自分でやったの?そうは見えないよ!」と皆様からお世辞?を頂
き、満足。まだまだ自分の姿を見なれない今日この頃です。
さて今回の「木かげの家の小人たち」はいぬいとみこさんの作品。「ながいながい
ペンギンの話」とか好きだったなあ、としみじみしながら読みました。時代背景が戦
時中なので、「小人」の存在がないと「戦争もの」になってしまいそう。子供の頃「
戦争もの」アレルギーだった私は、それで読まなかったのかも?祖母から聞かされる
「戦争の話」は大丈夫だったのですが、なにしろ突然「映画」を見せられたもので拒
否反応が芽生え、自ら好んでチョイスはしませんでしたね。戦時中に、「イギリスの
小人」を出現させてしまうという設定にびっくり。日本が舞台の話で、ヨーロッパ的
なファンタジーが展開されると、「なんか違うのでは・・・?」という作品になりが
ちですが、ここでは甘い要素や嫌味な御都合主義な部分があまりなく、すっきりと作
者の「思い」や「願望」が伝わってきます。ただ、この小人たちがどういう小人なの
か、というのが少し謎も残りましたが。
さてさて、お話は・・?イギリス人英語教師のミス・マクラクランから「小人」を
受け継いだ森山達夫は、毎日一杯のミルクをブルーのコップに入れ小人のもとへ運ぶ
ことを彼女に約束します。時は流れ、役目は妹へ、子供達へ、と受け継がれてゆきま
す。達夫の娘、「ゆり」がこの物語りの主人公。最初はバルボーとファーン夫婦二人
だった小人たちも、アイリス、ロビンの二人の子供が生まれ賑やかになってゆきます
。「ゆり」は忠実なミルクの運び手でしたが、戦争により食べ物が入手困難になり、
ついにはゆり自信も一人で長野へ疎開することに。ゆりは小人たちも連れてゆくこと
を決心するのですが・・・。
「小人」と「人間」の距離感が遠く、熱意をもってミルクは運ぶけれど、友だちにな
ったりしないという設定が、新鮮な感じです。お互いを大切に思ってはいるけれど、
口出しはしない、というか、べたべたしない。とてもスマート。私としては最後の方
に出てくる「アマネジャキ」という日本の小人が、けっこう好みなのですが・・・。
(「あんたってホント天の邪鬼なんだから!」と言われて育った私が「あまのじゃく
」に親近感を抱くのは当然のなりゆきと言えましょう。)今回でてくる「アマネジャ
キ」は人と反対の事をするばかりでなく、考えていることもお見通し。「〜って思
ってるな?」という言葉は私もよく使うので、呼ばれてしまうのも仕方ないか、とち
ょっと反省。
私は残念ながら入手できなかったのですが、「くらやみ谷の小人たち」という続編
もあるので、図書館などで借りてみるのもよいでしょう。どうやら、アイリス、ロビ
ン、アマネジャキのお話みたいですし。
来月アンコールワットへ(一瞬)旅立ってしまう私は、旅行の準備に追われ、読む
暇がないと思われるので、「短いお話か、あんまり何冊も書いていない人!」をリク
エストしたところ「秘密の花園・完訳」に決定。・・・短いのかなあ・・・?
主な作品
書名 著者 発行年 本体価格
ながいながいペンギンの話し/岩波書店
北極のムーシカミーシカ/理論社
チャペックのこいぬとこねこは愉快な仲間
ヨゼフ・チャペック 著 いぬい とみこ 訳 井出 弘子 訳 /河出書房新社
四つのふたご物語(全1冊)/理論社
みえなくなった赤いスキー/ 大日本図書
きっちょむ昇天 阪田 寛夫 ・ 阿部 光子 ・ いぬい とみこ 著 /教文館
ゆきおと木まもりオオカミ/理論社
ゆうびんサクタ山へいく/理論社
トビウオのぼうやはびょうきです/金の星社
川とノリオ/理論社
タラノキはかせは船長さん?/ 大日本図書
ちいさなちいさな駅長さんの話/ 新日本出版社
ふうことどんどやき/偕成社
クラバート/オトフリート・プロイスラー 暑くなってまいりました。夏もすぐそこでしょうか?雨が少ないようなのが気になります。 ところで暗い、恐い雰囲気の子供の本って、この頃少ないと思いませんか?悲しいとか悲惨と |
夜の鳥/ト−ルモー・ハウゲン
蒸し蒸し。いやな湿度が日に日に増してゆくような今日この頃。みなさんいかがお
過ごしですか?
今回はト−ルモー・ハウゲン。最近の作品では「月の石」が有名ですね。私はリアル
タイムにこの本を読んだわけでなく、福武文庫になってからなのですが、もっと昔に
読んでいたかったと思わせる本の一つです。それにしても福武文庫はよかった。もっ
と買っておくべきでした、と悔やまれます。いい児童文学たくさん出していましたよね。
もー古本屋で見つけたら即買いたい!という作品、かなりあります。
あらすじはあまり関係がないと思われる「夜の鳥」。主人公のヨアキムは小学校二
年生。パパのト−ルエリックとママのリンダと三人でアパートの二階に住んでいる。
ヨアキムには恐いものが沢山ある。階段の茶色いシミ、怒ったときのサーラ、どこへ
いってしまうかわからないパパ。そして夜の鳥。夜になるとヨアキムを赤いくちばし
と赤い目で襲おうと待ち構えている、洋服ダンスの奥からわいてくる何千羽もの闇の
鳥たち。ママが洋服ダンスの鍵をくれたので少しはましになったけど、耳をすませば
聞こえてくる、鳥たちのがたごと言う音・・・。ヨアキムのママは「自分が何を着た
ら良いのかわからない」人たちのために、ブティックで働いている。パパは学校の先
生になるはずだった。けれどもたった三日で子供たちが恐くなり、登校拒否を続けて
家にいる。お皿を洗っておいてね、お医者さんにちゃんと通ってね、というママの言
い付けを守らず、パパはふらりとどこかへ出かけてしまう。そのたびにヨアキムは不
安になってあちこち探しまわる。
この本を読んで、なんだ大人ってだめなんじゃん、と思って安心したのを覚えてい
ます。それまで大人を尊敬出来ないのは自分の理解力が足りないせいなのだろう、と
思っていたので。それから子供時代の不安だらけの張り詰めた世界を必死でやってい
く、という感覚がとても見事に再現されていて、そうだよそうなんだよ、と相槌打ち
たくなります。このへんは育った環境によって感じかたが違うでしょうね。うかつに
読むと忘れていた恐怖の世界に連れ戻されるような作品です。「夜の鳥」の続編とも
言える「少年ヨアキム」も必ず続けて読みたくなります。読んでも何かが解決するわ
けではないのだけれどね。
ハウゲンは1990年に国際アンデルセン賞を受賞。翻訳されている本は少ないで
す。文研出版から出ている「夏には、きっと」「魔法のことばツェッぺリン」「消え
た一日」の三冊も身近に潜む恐怖と、父母の不和などが浮き彫りに書かれていて、恐
い作品です。
「月の石」は新しい試みなのか?ファンタジー色が濃く、そして長篇です。いまいち
ファンタジー部分が悔い足らない感が残るのが残念。両サイドの世界から語られる話
が次第に近付いて絡み合ってゆくという形をとっていますが、もっと絡んでも良かっ
たように思います。現実の部分はよりリアルな感じがして好きですが。
さあ、あなたもじめじめ寒い梅雨到来の今!ノルウェーの寒い空気にひたって見ませ
んか?新しく見えてくるものがあるかもしれませんよ。
来月はクラバート。こちらも恐くて寒いお話。そういえば鳥というキーワードも同じ
ですね。「ホッツェンプロッツ」でおなじみのプロイスラーのお話です。ではまた来
月!! にいくら
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